発達性協調運動障害(DCD)による不器用さについて語る笹森理絵さん=神戸市内

発達性協調運動障害(DCD)による不器用さについて語る笹森理絵さん=神戸市内

 今回のテーマは「不器用」「運動が苦手」などの特性がある「発達性協調運動障害(DCD)」です。神戸市北区の精神保健福祉士、笹森理絵さん(53)は子ども時代から不器用な自分に悩み、大人になってからDCDや注意欠陥多動性障害(ADHD)などの診断を受けました。著書などで体験を発信している笹森さんに聞きました。

 -不器用さに気づいたのは?

 「幼児期からです。いすに座る姿勢を保てず、すぐに落っこちて、ぞうきんはおまんじゅうみたいな形でしか絞れませんでした。塗り絵をすると色がはみ出すし、はしを上手に使えずご飯をぽろぽろ落としちゃって。小学校に入ると体育の成績はいつも低く、図工や音楽の縦笛などでも失敗ばかり。算数も苦手で、式を書くと桁がずれていって分からなくなるんです」

 -それはつらそうです。

 「周囲から『不器用』と言われ続け、自分の努力が足りない、私が悪いと思っていました。先生が私の失敗を嘆くと『自分の人生、真っ暗』という気持ちになって…」

 -大人になってからは?

 「やっぱり不器用で職場でも失敗が続きました。コミュニケーションの問題もあってうつ病になったのがきっかけで、32歳のときにDCDやADHD、学習障害(LD)など発達障害の診断を受けます。不器用の原因が分かってすごくほっとしたけど、急に器用になるわけでもない。当事者グループを紹介され、落ち込んだり励まされたりを繰り返しながら、少しずつ『自分はこれでいいんだ』と思えるようになりました」

 -3人兄弟の母です。

 「3人の息子にも発達障害があります。最初は怒鳴ることもあったけど、自分が診断を受けてから、子どもの特性に合わせ、失敗しても怒らずに別の手段を考えるようになりました。自分が子ども時代に抱いたような苦手意識を持たせたくなかったんです。自分が不器用だったから、息子の将来を守れた気がします」

 「私は今でもボタンを留めるのが苦手で、ボタンなしの服を選びます。できないことは開き直って、自分を評価して生きることが大切。ただ子どもは学校生活で決まり事が多く、選択肢が少ない。大人は、子どもが失敗したら別の方法を考えると同時に『大丈夫だよ、なんとかなるよ』と声をかけてあげてほしいです」(聞き手・岩崎昂志)