今月のテーマは、配偶者や交際相手からの暴力、ドメスティックバイオレンス(DV)です。夫による経済的、精神的、身体的な暴力に苦しみ、他県から兵庫県に来た「星さん」(60代)に聞きました。
-これまでのことを。
「結婚したのは40代。相手は8歳年下で自営業。私は再婚で、小学生の娘と一緒でしたが、すぐに夫の仕事がなくなりました。私は仕事を増やして頑張りましたが、夫は仕事を探すふりをして探していなかったり…。借金も発覚しました」
「家事はやらない人でした。仕事を終え、午後10時に帰宅した私に、夫は『腹減った』と。着替える間もなく洗濯機を回し、お風呂を沸かして、料理をし…。だんだんやつれてきて、体調も崩しました。そんな私に夫は『やりくりが下手』『老けたな』って」
-苦しいです。
「気に入らないことがあると、顔つきが変わり、壁を殴ったり、物を壊したり。娘は部屋から出てこなくなりました。結婚6年ぐらいまでは、なんとかやり直そうと思っていたんです。私が至らないんだ、家事能力、稼ぐ能力が足らないんだと思っていました。夫は外面が良いので、私の味方は1人もいませんでした」
「ある時、夫が私をつかんできた。抵抗するとエスカレートし、肋骨が2本折れました。離婚を決意し、娘と2人、着替えやパソコンをバッグに詰め、知り合いのいない兵庫に来ました」
-周囲からは?
「『結婚前に気付かなかったの?』と言う人がいますが、気付いていたら結婚しません。また被害者の多くは『男を見る目がない』『男運が悪い』とか言われ、自分のせいだと思いがち。私はDV被害者のための心のケア講座をたまたま見つけて受講し、自分は悪くないと分かってすごく楽になりました。何があろうと暴力はいけないんです」
-今の気持ちは?
「トラウマ(心的外傷)は小箱に入れて、心の引き出しに入れている感じです。でも何年か前、仕事関係で脅された時、怖い感覚がフラッシュバックしました。あいみょんの『ざらめ』という曲で、『この胸に残った鉛の屑はいつか溶けるだろうか』という歌詞があります。…泣けます。自分と同じ思いをしている人が楽になれたり、心を整理したりできるよう、今は一般社団法人『星の樹』で被害者支援をしています」(聞き手・中島摩子)