11月のテーマは聴覚や味覚、触覚などの感覚が過剰に反応し、日常生活が困難になる「感覚過敏」です。発達障害のほか、自律神経失調症やうつ病などの症状としても知られます。今回インタビューに応じたのは、「感覚過敏研究所」(東京都)の所長で、早稲田大の通信教育課程1年、加藤路瑛さん(18)です。10月に甲南女子大(神戸市東灘区)で講演した加藤さんに、学校生活の悩みなどを聞きました。
-どんな症状ですか?
「聴覚でいうと、音の刺激が四方から襲ってくる感じです。教室の中でいろんな人がしゃべっていたり、甲高い声で笑っていたり、音が交じるのがつらい。テストの時、みんなが一斉に紙をめくったり、鉛筆で『カタカタ』と音をさせたりするのも、刺激が襲ってくるように感じます」
-触覚や味覚などは。
「例えば、靴下のつまさきの縫い目や左右の小さなコブが痛いと感じます。制服やワイシャツなどもチクチクと感じたり、締めつけがつらかったりします」
「味覚は、食べた瞬間の味や食感で『これは食べられない』と感じ、口から出してしまうことも。食べた後に頭が痛くなったり、気持ちが悪くなったりもするのですが、小学校の給食は絶対に一口は食べないといけないルールだったので、かなりつらかったです。給食の時のにおい、いろいろな料理のにおいが混ざるファミレスも苦手です」
-中学1年の時、保健室の先生に「感覚過敏では?」と言われたそうですね。
「それまでは、自分のつらさをうまく表現できず、自分を『できることが少ない人間だ』と思っていましたが、つらさの原因が分かり、開放感がありました。そして、感覚過敏を理由にやりたいことを諦めなくてもいいようにしたい、と考えるようになりました」
-中学2年で不登校、高校は通信制へ。13歳で立ち上げた感覚過敏研究所では啓発のほか、縫い目やタグが肌に触れない服などの開発も進めていますね。
「例えで使うのは、靴の中に入った小石です。痛くてすぐに取り除きたいけれど、その場で立ち止まることができなければ、我慢して歩きます。感覚過敏も、緊急時にどうしても食べないといけないなら、食べたり触れたりはするけれど、ずっとはつらい。好き嫌いやわがままとは違うと知ってもらいたいです」
「(開発した)服は、これなら着られる、と言ってくれる人がいる。感覚過敏缶バッジを持って学校に相談し、学校に行けるようになったという声も。それぞれの感覚の凹凸を受け止め、尊重できる社会にしていきたいと思います」
-子どもたちに向けて。
「今、見えているだけが自分の道じゃないよ、選択肢はたくさんあって、あきらめる必要はないよ、と伝えたいです。親や先生は、決め付けることはしないでほしいですね」
(聞き手・中島摩子)