■性的少数者 老後も安心できる居場所を
今月はセクシュアルマイノリティー(性的少数者)をテーマに、当事者として情報発信に取り組む芦屋市の東口由佳さん(50)にインタビューしました。男女のどちらでもないと自認する「Xジェンダー」の東口さんは、思春期の体の変化や服装で違和感を抱えつつ、周囲に気軽には話せなかったそうです。当事者の輪づくりにも携わり「セクシュアルマイノリティーが安心できる居場所を、高齢期も視野に入れてつくりたい」と話します。
-性別の違和感を持ち始めた時期は。
「私は4人きょうだいの長女。物心がつく頃から女の子っぽい服装が苦手で、なんとなく自認はあったと思います。特に、服装で女の子らしさを決められるのが嫌でした。スカートははかずに小学校に通い、赤いランドセルじゃなくてリュックサック。当時はまだ(性的少数者の)情報があまりなくて、周囲には『男の子みたいな女の子』という感じで受け止められていました」
-思春期は。
「中学生になると胸が膨らみ月経が来るなど、自分の体の変化が嫌でした。でも、普段の生活では周囲の皆に合わせないとあかんと感じていました。例えば、男性アイドルや若い男の先生を『かっこいい』『誰が好き?』という女子の会話に合わせないと、クラスで居場所がありません。一時期、周囲から無視をされた経験があり、余計にそう思ったのかもしれません」
「高校に入ってから、男の子と付き合ってみたこともあります。友達としてすごく好きな人だったんですが、異性として気持ちが盛り上がるまでにはならなくて、結局うまくいきませんでした。『ああ、これは無理やな』と改めて感じました」
-卒業後は。
「社会人になり、職場で仲良くなった女性の先輩に告白して交際しました。長く一緒にいましたが、当時は相手の親には伝えず、会うときは友達として振る舞いました。一方、気持ちの変化で大きかったのは、SNS(交流サイト)をきっかけにセクシュアルマイノリティーの当事者とつながれたことです。思い切って神戸の当事者団体のイベントにも行ってみました。本当に普通のお茶会なんですが、そこではマイノリティーであることを隠す必要はありません。ありのままの自分で話ができることがこんなに楽なのか、と気付かされました」
「同時に、これまでは『自分じゃない自分』を演じていたんだと強く思いました。大きな転機でした」
-自らも当事者として発信するように。
「2022年に『虹凪』(にな)という団体を立ち上げ、インスタグラムやX(旧ツイッター)などで発信しています。LGBTQ関連のイベント参加や、今は休止中ですがカフェイベントにも挑戦しました」
「一言にセクシュアルマイノリティーといっても、抱える悩みはさまざまです。私の中のテーマは、さまざまな性自認の当事者が穏やかな老後を過ごせる社会づくり。婚姻制度などの壁もある中で、当事者が老後に困ることは何か。自分が年齢を重ねたことや、福祉の仕事に携わる中でこの目標が固まりました。自分たちの居場所をつくりながら、声を集めて行動したいと思います」
(聞き手・岩崎昂志)