信じることとはどういうことか。信仰心による将来への不安などについてインタビューに答えるきちさん=神戸市中央区東川崎町1、神戸新聞社

信じることとはどういうことか。信仰心による将来への不安などについてインタビューに答えるきちさん=神戸市中央区東川崎町1、神戸新聞社

 今月は「信仰心」をテーマに、20代で宗教3世に当たる会社員きちさん=兵庫県=に話を聞きました。信仰は祖父母の代から続き、きちさんも生まれてすぐ宗教団体に入りました。この先も信仰を続けたい気持ちはあるものの、結婚などの将来に漠然とした不安もあるそうです。「信じる」とは何か-。揺れ動く気持ちを打ち明けてくれました。

 -信仰はいつから。

 「生後1カ月ほどたって入ったそうです。両親と、それぞれの祖父母にも同じ信仰があって、私も当然のように。小学生の頃は毎朝、お祈りをしてから通学しました。振り返っても、最も一生懸命に取り組んだ時期だったと思います」

 「これまで宗教を理由に仲間外れにされたり、差別を受けたりしたことはないんです。友人に信仰があることを伝えても『へぇ』といった反応でした。同じ信仰がある人も集会などで会えば親切に接してくれましたし、私自身、何も疑うことなく小中高、大学と年齢を重ねていきました」

 -そんな中で、信仰に対して疑問を抱いたことも?

 「以前、長いことお付き合いした女性がいました。彼女には信仰があったわけではありません。初めは真剣に話すこともなかったですし、あえて宗教のことは考えないようにしていました。ただ、例えば一緒に遊びに行った先で、私が宗教上の理由で体験できないこともあり、彼女には配慮させていたかもしれません」

 「次第に結婚も浮かび、一度は信仰についてきちんと話し合う必要があると思いました。少しでもちゃんと知ってほしくて、集まりに一緒に行きました」

 「しばらくして、彼女から『はっきり言っておくけど、私は(信仰を)するつもりはない』などと伝えられました。でも、不思議と落ち込まなかったんですよ。仕方ないかな、と。その後、交際関係は解消しましたが、あの時の出来事は別れるきっかけの一つだったかもしれません」

 -かつて安倍(晋三)元首相が殺害された事件を機に、宗教団体への高額献金が問題視されました。「親族による多額の献金が家庭環境の崩壊につながった」「献金しないと自分自身や家族の不幸につながると教えられた」との指摘も…。

 「私たちの信仰にも、お金を寄付することで幸せになれるというのはあります。でも、それってよく考えたほうがいい。マインドコントロール? 一歩間違えれば、あのような事件のきっかけになってしまう。そこは、私たちの教えも、考え直さないといけない」

 「きっと、この先も自分自身の信仰と向き合わないといけない時がくるはずです。特に結婚を考える機会があれば、同じ悩みが生まれそうです。考え方も、生活も相手とズレが生じてしまいます。子どもが生まれたら、同じ信仰をさせるのか。果たして、乗り越えられるか。今から不安です」

 「信仰さえなければ…。そうは思いたくありません。宗教を通じて、すてきな人たちと出会えたのは事実です。信仰って、きっと自分が思い描く『幸せ』に近づくための方法です。もし同じ悩みがある人がいるならば、一度立ち止まって自分の中で考えるのもいいかもしれませんよね」(聞き手・千葉翔大)