交流サイト(SNS)で知り合った相手に送金しようとしていた女性の詐欺被害を防いだとして、神戸市灘区城内通3にある定食屋「しらたま」の店主、上月(こうづき)香織さん(47)が、兵庫県警灘署長感謝状を受けた。女性が口にした「コウリガシ」の言葉をきっかけに、丁寧に話を聴いて説得し、署に通報した。(原ひより)
3月7日、土曜日の昼下がり。定食が売り切れ、上月さんが一息ついていると、ストールを首にまいたショートカットの女性が引き戸を開いて入ってきた。年の頃、70代くらいのいちげんさん。完売を伝えると店を出たが、すぐに戻ってきた。
「変なこと聞くんですけど、この辺りに『コウリガシ』の店はありますか」。女性の問いかけに、上月さんはピンとこなかった。「向かいのおすし屋さんに聞いてみたらどうですか」と返すと、女性は「ちょっと人に言えない事情がありまして…」とつぶやき、去っていった。
直後、耳なじみのなかった「コウリガシ」が「高利貸」に変換された。詐欺を疑った上月さんは、すし店に入る女性を確認し、知人の警察官に相談。「詐欺の可能性が高い。止めてくれ」と返ってきた。
最後の客が定食を食べ終えると、急いですし店へ駆け込み、叫んだ。「それ、詐欺やで!」。すし店の店主と話し込んでいた女性が、驚いた表情で上月さんを見上げた。
会話に加わり、女性の語りに耳を傾けた。
軍医としてウクライナの戦場にいる日本人の男性と婚約していること。男性とはフェイスブックで知り合ったこと。「帰国のための費用を借りてきてほしい」と頼まれたこと。
女性は、会ったことのない男性への恋心をうれしそうに話した。男性の娘を名乗るアカウントともやりとりをしており、「写真館で撮った自分の写真を送ったら、『お母さん、きれい』と言われた」と顔をほころばせた。
被害が相次いでいる「SNS型ロマンス詐欺」の典型的な流れだった。だまされていると指摘しても、女性は「違うのよ」と男性を信じて疑わない。
午後2時、すし店が閉じた。上月さんは女性を連れて自分の店に戻って説得を続け、「きちんとしたところでお金を借りた方がいいから、一度、警察に相談しよう」と提案した。
通報を受けて駆け付けた2人の灘署員に諭され、女性は詐欺だと気付いた。涙を流し、ハンカチで拭う。店の奥にいた猫を見つけ、近寄っていってなでた。少しずつ笑顔が戻り、「カラオケ、行ってくるわ」と声を張って店を後にした。
女性に寄り添い、適切な判断で通報して被害を食い止めたとして、灘署で感謝状を受け取った上月さん。「犯人がつくり上げた設定は巧妙だった。食い止められてほっとしたが、自分の親も、いつ同じような被害に遭うか分からないと思った」と話した。























