7月下旬、丹波篠山市で岩石の中に含まれている化石を観察するミニツアーを開催しました。こう書くと、暑さの厳しい野外で汗だくになっている様子を想像されるかもしれません。しかし、このミニツアーは涼しい屋内で実施することができました。なぜ外に出かけずに済んだかといえば、建物の床に敷かれている石材を観察したからです。
丹波篠山市民センター1階アトリウムの床の一部には、ドイツのジュラ紀の地層から採掘されたと思われる石材が敷きつめられています=写真A。この岩石は海底で堆積した石灰岩で、当時の海に生息していた生物の化石が含まれています。最も多く見つかるのはウミユリの化石です=写真B。ウミユリは棘皮(きょくひ)動物(ウニやヒトデの仲間)の一群で、成体が植物のユリのように海底に固着する種類からこう呼ばれますが、ここで観察できるのは浮遊性と考えられている種類です。
ウミユリほど多くはないものの、アンモナイトと思われる化石も見つかります=写真C。他には、よくシダ類の葉の化石と間違えられる「しのぶ石」が至るところで見られます=写真D。しのぶ石はマンガンなどの金属を含んだ水が岩石の割れ目に染み込んでできた鉱物で、化石ではありませんが、美しい樹枝状の模様を観察できます。
ジュラ紀の地層から採掘される石材の中でよく化石を含んでいるものの一つが、ドイツ南部のゾルンホーフェン一帯で産出するクリーム色やベージュ色の石灰岩です。この石灰岩は今から約1億5千万年前の浅い海底に堆積したもので、最古の鳥類として有名な始祖鳥のほか、魚類、甲殻類、アンモナイトなど保存状態のよいさまざまな化石が発見されています。色調や模様が美しいことに加えて、平らな板状に割れやすい性質があり加工しやすいことから、ゾルンホーフェンの石灰岩は石材として多く流通しています。日本国内でも店舗や住宅の入り口付近に敷いたり、壁に貼ったりして用いられているのをよく見かけます。
石材中の化石はハンマーを使って「採る」ことはできませんが、公共の場所であればカメラで「撮る」ことはできます。周囲を通行する方の迷惑にならないように注意しながら、身近な場所に化石が埋まっていないか探してみてください。