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念願のパン店を開いた山下和久さん(左)と稲田美樹さん=たつの市御津町岩見
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念願のパン店を開いた山下和久さん(左)と稲田美樹さん=たつの市御津町岩見
店内に並ぶパン。14種類あり、いずれも自慢の一品だ=たつの市御津町岩見
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店内に並ぶパン。14種類あり、いずれも自慢の一品だ=たつの市御津町岩見

 定年退職の直前にがんが見つかり、ステージ4と診断された男性が、つらい治療に耐えてがんを抑え込み、兵庫県たつの市御津町に念願のパン店「こばとぱん」を開いてファンを増やしている。闘病の経験から、おいしさに加えて体に優しいパンを追求する。看板商品の一つは「シンプル食ぱん」。乳製品や卵は一切使わず、国産小麦粉の素朴な風味ともちもちした食感が特徴だ。(田中伸明)

 同市の山下和久さん(64)。福岡県の高校を卒業後、姫路の新日鉄広畑製鉄所(現日本製鉄瀬戸内製鉄所広畑地区)に入り、鉄製品の品質管理を担った。定年を前に「自分の力を試したい」とパン店開店を決意。思いに共感した稲田美樹さん(59)と専門学校に通い、腕を磨いた。

 しかし、そこから試練が始まる。退職直前の健康診断で大腸がんが見つかり、肝臓への転移も判明。2018年12月に大腸のがんを切除したが、肝臓には5カ所もあり、手の施しようがない状態だった。

 それでも夢をあきらめずパン作りの修業を続けた。「延命治療」のつもりで抗がん剤を投与したところ、肝臓のがんは予想外に縮小した。手術で五つのうち三つを切除。静脈を取り巻いて切れなかった残り二つも薬剤でさらに縮小させ、20年9月の3回目の手術で取り除いた。

 自宅を改装してこばとぱんを開いたのは19年5月。まだ抗がん剤治療が続いていた。「立って仕事をしていると指先や足がしびれてきた」と振り返る。現在はほぼ元の体調に戻ったという。「こばとぱんを食べていますから」と笑う。

 パンを焼く日は、午前0時前から厨房(ちゅうぼう)に立つ。一番最初に作るのがシンプル食ぱん。アレルギーのあるお客さんも食べるため、他の材料が混ざらないようにするためだ。焼き上がりは午前4時ごろ。「うまくできると今でもうれしい。だからやめられません」

 味と健康を両立させるため食材を厳選する。小麦粉は神戸・増田製粉所の「北野坂」、塩は赤穂の伝統製法による「天海の塩」。シンプル食ぱんにはバターの代わりに太白ごま油を使う。発酵に使うイーストは、姫路の酒造会社の米こうじを原料に手作りする。「室温によって生地をこねる時間を変え、より良い焼き上がりを心掛けている。サラリーマン時代の商品管理の経験が生きています」

 シンプル食ぱんは1斤380円、小豆から炊き上げたあんを使ったあんぱん150円など。土日曜の午前8時~午後4時のみ営業、売り切れ次第閉店。こばとぱんTEL079・258・8284(金・土・日曜)

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