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平野岩夫さんが養殖池に餌を投げ込むと、食いつくサーモンで水面が激しく波立つ=遊ファーム
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平野岩夫さんが養殖池に餌を投げ込むと、食いつくサーモンで水面が激しく波立つ=遊ファーム
出荷サイズに育った「しそう森林のサーモン」=遊ファーム
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出荷サイズに育った「しそう森林のサーモン」=遊ファーム
大学生から贈られた寄せ書きを手にする平野岩夫さん=遊ファーム
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大学生から贈られた寄せ書きを手にする平野岩夫さん=遊ファーム
清流を引き込んだ養殖池。サーモンとともに地域の未来も育む=遊ファーム
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清流を引き込んだ養殖池。サーモンとともに地域の未来も育む=遊ファーム

 “森林王国”兵庫県宍粟市の山あいにある小さな集落・上ノ上(かみのかみ)地区で、ご当地サーモンの養殖が始まってから5年がたった。高齢化と過疎化が進む中、清流の恵みを生かし、新たな雇用と産業づくりを目指す住民らの試み。地域活性化の願いを託したご当地サーモンは、播磨など全国各地で養殖され、ライバルは多い。集中豪雨やコロナ禍にも見舞われた。苦難は絶えないが、宍粟で生まれ育ったサーモンの販路を広げようと、住民らの挑戦が続く。(段 貴則)

 養殖池がある同市山崎町の上ノ上集落は、標高約400メートルに位置し、揖保川の支流・伊沢川の最上流。約50世帯150人が暮らす。

 「最初は、地域で増える遊休地や耕作放棄地を何とかしようと考えたんや」。同集落に住み、ご当地サーモン「しそう森林(もり)のサーモン」を育てる平野岩夫さん(71)は、養殖のきっかけを振り返る。

 平野さんは2016年、住民らと一般社団法人「遊ファーム」を設立。ドクダミなどの薬草栽培、釣り堀事業とともに、地元のアマゴ養殖施設を生かしたご当地サーモンの養殖を事業の柱に据えた。

 ニジマスを品種改良した「ドナルドソン」という品種で、ふ化して1年ほどたった稚魚1万2千匹を岩手県の業者から購入し、養殖を始めた。味が良くて、海水への適応力もあるのが特長。のびのび泳ぎ回れるよう、清流を引き込んだ養殖池も整えた。

 出荷できる成魚に育つまで、ふ化から3年かかる。成魚になる前の段階で、神戸市や赤穂市の沖合で養殖する事業者などへ稚魚を供給しつつ、宍粟の清流のみで成魚まで育てるご当地サーモン化に挑戦。宍粟で成魚から卵を採り、ふ化させて育てた成魚の出荷を目指した。

 ところが18年夏、西日本豪雨の影響で、養殖池につながる取水口に岩や砂利が堆積し、清流を引き込めなくなった。「ほとんどの稚魚を失った。自然が相手なのでどうにもならん」

 それでも豪雨被害を生き延びた稚魚を大切に育て、再び出荷を目指した。

 「やっと、やっとなんや。正真正銘、宍粟で卵からふ化して、育ったサーモンを出荷できるとこまできとったのに」。初の本格出荷を見込んでいた20年3月、今度はコロナ禍の影響で、ホテルなどからの注文をすべて失った。

 災害やコロナ禍など苦難続きの中、新たな出会いもあった。

 宍粟市在住で、地域の課題解決に取り組む思沁夫(スチンフ)大阪大学招聘(しょうへい)・客員教授と、その学生たちだ。「コロナ禍が終わったら、上ノ上へ遊びに来てください」。学生からのアドバイスを受け、通信販売でサーモンを注文した客へ手書きのメッセージを添えて商品を送るようになったという。

 平野さんは「ご当地サーモンの養殖に、過疎が進む上ノ上集落で取り組むことに意味がある。産業として根付かせ、新たな担い手を地域に呼び込むきっかけにしたい」と力を込める。

【ご当地サーモン】サケ・マス類に地域名を冠したサーモン。ブランド化による地域活性化を目指し、全国各地で養殖されている。兵庫県内では、姫路・家島諸島で養殖される「白鷺サーモン」が先駆け。同じく播磨灘では、たつのの「播州サーモン」や赤穂の「坂越オイスターサーモン」も養殖されている。一方、「しそう森林のサーモン」(宍粟市)や「神鍋清流サーモン」(豊岡市)など、山あいの淡水で育てる例も目立つ。卵から成魚になるまで淡水のみで育てるので、寄生虫アニサキスの心配がないことも強みという。

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