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「教育画集 赤穂義士」。赤穂には「あかほ」と振り仮名が付けられている
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「教育画集 赤穂義士」。赤穂には「あかほ」と振り仮名が付けられている
陸軍特別大演習の記念地図
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陸軍特別大演習の記念地図
赤穂市の広報の題字は第4号から「廣報あかほ」に。第1~3号は「赤穂市公報」だった
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赤穂市の広報の題字は第4号から「廣報あかほ」に。第1~3号は「赤穂市公報」だった
「あかほ」から「あこう」への改称を伝える広報あこう100号
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「あかほ」から「あこう」への改称を伝える広報あこう100号
大正9(1921)年の播州赤穂駅。看板には「ばんしうあかほ」の駅名が見える
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大正9(1921)年の播州赤穂駅。看板には「ばんしうあかほ」の駅名が見える

 兵庫県の赤穂の地名は、清流千種川の河原一面に、赤い穂のタデが生えていたことに由来するという。「赤い穂」と書いて赤穂というわけだ。「忠臣蔵の古里」「塩の町」として広く知られるが、赤穂が「あこう」ではなく、「あかほ」と記されていた時代を知る人は少なくなった。赤穂市尾崎の「たでのはな美術館」の佐野正幸館主が集めた資料などから「あかほ」から「あこう」への変遷をたどった。(坂本 勝)

■「赤いタデの穂」由来千年以上前の資料に「阿加保」

 「当郡海辺ニ生スル所ノ蓼(タデ)ソノ穂赤ク四月ニ実ノル、他産ニナキ所ナリ、郡ノ名コレニ因テ名ツク」。1727(享保(きょうほう)12)年の「播州赤穂郡志」には、海辺に生えて赤く色づくタデが赤穂郡名の由来になったことを記した一文がある。

 さかのぼってみると、日本最初の百科事典ともいうべき「和名類聚抄(わみょうるいじゅうしょう)」(930年代に成立)の「播磨国郡郷考」の項には、赤穂一帯を「阿加保(あかほ)」と記してある。漢字は違えど、千年以上も前から、赤穂は「あかほ」だったことが分かる。

 赤穂の名を全国に広めた一つが「赤穂義士」。関連資料をみると、1913(大正2)年の「教育画集赤穂義士」の表紙には「あかほぎし」と振り仮名が付いている。画集内の別の場面でも、赤穂城の明け渡しについて「アカホノシロワタシ」とある。

 19(大正8)年の「赤穂花嶽寺案内記」でも赤穂には「あかほ」の振り仮名が付き、30(昭和5)年の陸軍特別大演習の記念地図には平仮名で「あかほ」と赤穂の場所を示している。明治初期の「大日本物産図会」、06(明治39)年の「国民教育忠勇唱歌第二集」、19(大正8)年の「忠臣御国之華」でも赤穂は「アカホ」「あかほ」と仮名が振られている。

■昭和初期から「あこう」散見 市広報は昭和35年に変更

 古くから「あかほ」の表記や振り仮名が定着していた赤穂。いつから、なぜ「あこう」へと変わったのだろうか-。

 時期をたどると、昭和初期ごろから「あこう」という表記が見られるようになる。

 手掛かりの一つが、佐野さんが所有する絵はがき。明治-昭和初期に赤穂の観光名所を撮影したもので、「あかほ」「あこう」が混在している。例えば、赤穂をローマ字で「AKAHO(アカホ)」と記したはがきが、赤穂城の大手門や山鹿素行の銅像、赤穂大橋、塩田の景観写真とともに見られる。一方、「赤穂塩田釜家」や赤穂御崎の写真には「AKO(アコウ)」の表示も現れる。

 さらに、1935(昭和10)年の「銃後の旅(中国篇(へん))」では、赤穂の振り仮名は「あかう」となっている。

 決定的な資料は赤穂市の広報だ。

 60(同35)年4月の100号発行を機に、題字を「広報あかほ」から「広報あこう」へ改めた。100号には理由をこう記す。「本号から『あかほ』の題字を『あこう』と改めました。これは地名、名前等の名称は発音通り書くのが正しいためこのようにしたものです」

 元赤穂市市史編さん担当で、高光寺(同市加里屋)の三好一行住職(71)は「旧仮名遣いの『あかほ』を『あこう』と読んでいたのでは。『あかほ』を『あこう』と読む人が減り、『あこう』が定着したのかもしれない」と推測する。

■駅名板に「ばんしうあかほ」大正10年、赤穂鉄道播州赤穂駅

 「あかほ」の表記は、かつての鉄路からも見て取れる。1921(大正10)年に撮影された赤穂鉄道播州赤穂駅の駅名板には、右から左へ書かれた平仮名で「ばんしうあかほ」とある。

 赤穂鉄道時代の播州赤穂駅は、現在のJR赤穂線の播州赤穂駅よりも南、ウエスト神姫赤穂営業所がある場所にあった。21年4月に有年-播州赤穂間の12.7キロで開業。蒸気機関車(昭和初期からはガソリンカー)が走り、赤穂特産の塩も運んだ。51年12月、国鉄赤穂線が開業し、山陽線の相生駅と接続されるのに合わせ廃止された。

 赤穂線は来月12日、相生-播州赤穂間の開業から70周年を迎える。西へ路線を延ばし、62年9月に相生-東岡山間の57.4キロが全通した。

    ◇

【たでのはな美術館】版画家の佐野正幸さんが開く私設の日本近代版画博物館。赤穂の名の由来を基に、タデの小さな花が実を結び、穂となるように、赤穂の美術の拠点に育つことを願って命名した。歌川派の浮世絵や棟方志功、竹久夢二らの版画を収蔵。2005年、赤穂市加里屋の商店街空き店舗に開館。08年に閉館した後、12年に同市尾崎で再開した。年4回程度、企画展を開く。

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