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冬の日差しに照らされる播磨灘。カキ筏の間を縫うように船舶が通り過ぎる=たつの市御津町室津
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冬の日差しに照らされる播磨灘。カキ筏の間を縫うように船舶が通り過ぎる=たつの市御津町室津
【1】ぷりテキ
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【1】ぷりテキ
【2】焼きガキ
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【2】焼きガキ
【3】カキの土手鍋
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【3】カキの土手鍋
【4】牡蠣焼き
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【4】牡蠣焼き

 兵庫県・播磨の山深くから流れ出る河川によって、陸の栄養分をふんだんに受け止めた播磨灘は、カキを滋養豊かな冬の恵みに育て上げる。今、まさに旬。待ちわびた人も多かったはずだが、新型コロナウイルスの感染再拡大のあおりで、各地の「かきまつり」が今年も中止に。例年、合計すると数万人を播磨地域に呼び込んでいただけに、養殖業者も「今年は例年にないほどの豊漁、身入りの良さなのに」と残念がる。冬の恵みを追って西から東へ、感染予防対策は万全に「カキグルメ」を堪能する旅に出た。(大山伸一郎)

 播磨灘のカキは種付けから半年ほどで出荷できる「1年かき」。実が大きく、加熱しても縮みにくく、弾力のある歯応えがある一方、カキ独特の風味は出荷まで2~3年を要する広島などの産地に比べると少ないという。それは逆に、くせの強さが苦手な層にも人気を呼び、徐々に産地を広げて収穫量を増やした理由の一つでもあるらしい。生食には少し抵抗のある九州出身の中年記者(47)には、ぴったりかもしれない。

     ◆

 【1】赤穂市から出発。JR播州赤穂駅から徒歩5分、創業56年の日本料理店「美鶴(みかく)」(同市加里屋)でぷりテキを注文した。「ぷりぷり」のカキを「ステーキ」のように焼く「ぷりテキ」。赤穂商工会議所が10年ほど前、「殻を外してむき身を焼く」というルール以外は各店舗に自由に作ってもらおうと始めたご当地グルメだという。

 店では、濃い目のソースで季節の野菜と焼く。身は驚くほど大きく、6センチを超えていた。熱々なのに、見た目はふっくら、かむとプリプリ。ご飯に合う!

 店主の廣瀬和博さん(62)は「赤穂産だからこそ味も形も保ったまま出せる」と胸を張る。例年2月末までの限定メニュー、まさに旬が詰まっているのだ。

 【2】千種川を越え、直売所が並ぶ坂越の港町を過ぎて相生市へ。1970年代から養殖が始まった相生湾の先に位置する坪根地区のカキ小屋「大豊(たいほう)」(同市相生)を訪ねた。

 目の前に海がある開放的なテーブルに殻付きのカキが並ぶ。タイミングが合えば水揚げ風景も見られる。自分で調理する焼きガキの食べ放題は45、60、90分の3種類から選べる。相生駅から15分かけてタクシーで来る人も珍しくなく、平日のこの日も京都から新幹線で来たカップルは90分間、黙々と熱々の身とビールを味わっていた。

 網元でもある水産会社代表の竹内卓也さん(58)は「海の近くで気持ち良く食べてほしい」。何より香ばしさが食欲を誘うカキ小屋。感染状況が落ち着いたら、今度はタクシーで来てのども潤そうと心に誓い、港を後にした。

 【3】たつの市に入り、歴史ある街並みが残る室津漁港でもカキの看板が目立つ。瀬戸の海は低い日差しに照らされ、カキ筏(いかだ)が連なる風景が広がる。

 「道の駅 みつ」(同市御津町室津)で、平日でも行列が絶えないレストランを切り盛りするのが、駅長兼料理長の牧野良弘さん(48)。12年前の開店時から多くの観光客の胃袋を満たし続けてきた。

 牧野さん監修の「土手鍋の素」を使ってカキの土手鍋を作ってみた。トマトや牛乳を隠し味にしたという牧野さんは「にんにくやしょうが、卵をうまく使うといろんな味わい方ができますよ」とアドバイスをくれた。みそ味でじっくり煮込んでカキの風味はさらに深くなっていたが、まったく縮んでいない身の大きさに驚く。鍋の中の主役は、味も形も見事に存在感を保ったままだった。

 【4】揖保川を渡り、姫路市の「網干じばさんひろば魚吹津」(同市網干区興浜)に到着。河口部の一角に、養殖と直売を手がける「勤成丸」の店舗があった。

 店長の上田晴樹さん(54)のオススメは「うま味を味わうならしょうゆ味の牡蠣(かき)焼き」。待つこと10分。なるほどお好み焼きではあるが、カキの存在が強すぎてそう呼ぶ理由も分かる。直径18センチの中に8個。これで中サイズというから驚きだ。生地は柔らかく、薄味で、濃厚なカキの風味が優しく包まれてうま味が際立つ。

 上田さん、実は水揚げも調理もこなすカキの達人。昨年11月の出店に合わせ、カキグルメを食べ歩いて研究を重ねた。「勉強はしたけどまねはしない。カキそのものには絶対の自信があるんで」。柔和な笑顔の奥に強烈な誇りを見た。

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 旅の最後に、実は赤穂が播磨灘カキ産地の西端でないことに気付いた。

 岡山県備前市の日生地区は赤穂の隣町で、今では広く名が知られる「カキオコ」発祥の地。ただ、その名称を他地区の飲食店が使うことはできない。備前東商工会が2008年に商標登録しているためだ。

 1960年代、養殖が始まった日生など備前の海は播磨灘西部に含まれ、1年カキの産地同士。呼び名は違えど似たような調理法は混在する。うま味と存在感で人気を誇る旬の味を育む豊かな海を見習って、今度は県境をひょいと越えて食文化で交流してみようか。

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