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多様な性への理解が深まるよう期待する長谷川亜佐人さん(本人提供)
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多様な性への理解が深まるよう期待する長谷川亜佐人さん(本人提供)

 兵庫県たつの市は、LGBTQなど性的少数者のカップルを結婚相当の関係と認める「パートナーシップ宣誓制度」を4月1日から導入する方針を固めた。姫路市も2022年中の導入を検討しているが、西播磨では初めて。当面のメリットは市営住宅への入居が可能になることなどに限られるが、今後、拡充が可能かどうか検討を進める。(直江 純)

 宣誓制度は2015年に東京都渋谷区、世田谷区が創設し、県内では16年に宝塚市が続いた。現在は阪神間の全7市1町と明石市が導入する。全国では大都市を中心に146自治体に広がり、全人口の4割以上をカバーしている。

 たつの市は、17年に全国に先駆けて部落差別解消推進条例を制定。パートナーシップ制度についても1月に策定した第2次総合計画で「多様な性のあり方を支える」として言及したほか、市議会内にも導入を求める声があり、実現に向けて制度の詳細を詰めてきた。

 市はプライバシーに配慮するため、宣誓手続きの際には個室を確保する方針で、希望者とは事前に日時を調整する。制度を利用したカップルには受領証明カードが発行され、市営住宅への入居が可能になるほか、市民病院の面会や病状説明に配偶者と同じ扱いで立ち会える。

 民間企業でも、自治体に宣誓したパートナーを生命保険の受取人として認めたり、携帯電話の家族割引などの対象にしたりする例が増えている。

 自治体によっては、課税証明や介護認定などでも家族として扱う例もある。阪神間8市町では転居した後の手続きを簡略化する協定を結んでおり、たつの市はそれらを今後の課題として検討する。

 市人権推進課は「誰もが平等で快適に暮らすために、宣誓制度で市民の理解が進むことを期待している」とし、22年度一般会計当初予算案に啓発講演会などの費用を計上するという。

 同課TEL0791・64・3151

【LGBTQ】同性愛者のレズビアンとゲイ、両性愛者のバイセクシュアル、出生時の性別と性自認が異なるトランスジェンダー、自分の性別の在り方に迷っている、決めたくない人(クエスチョニング)らの頭文字。それ以外にも性の在り方は多様であるため、包括的に「LGBTQ+」と表現する場合もある。

■「多様な性への理解深まる」

 たつの市出身、在住の長谷川亜佐人(あさと)さん(33)は女性の体で生まれたが、自認する性は男性というトランスジェンダーに悩みながら思春期を過ごした。パートナーシップ宣誓制度の導入を「大きな一歩」と喜び「制度化されることで多様な性への理解も深まるはず」と期待を寄せる。

 物心がついた頃から自分の性別に違和感を覚えていた長谷川さん。女性らしい服装への嫌悪感から、中学、高校時代は不良グループに属して体操着のジャージー姿で過ごした。

 「完璧な男性になりたい」と願い、20代半ばまで方法を模索したが「期待したほど医療技術は進んでいなかった」。女性として生きることも、完璧な男性として生きることもできない…。現実と向き合い、選んだのは「過去を否定せず、受け入れて生きる」ことだった。

 男性の見た目で、自分の好きなように生きようと決め、2017年に林業会社「山壱」をたつの市で起業。樹木の剪定(せんてい)や伐採に日々汗を流す。

 当事者らが気軽に悩みを相談できるようなコミュニティーづくりも市内で進める。中学時代の友人と「リンクスたつの」を結成し、写真共有アプリ「インスタグラム」などで情報を発信。性的少数者の雇用に理解がある企業を募り、リスト化することで就職支援へつなげようとも考えている。

 「生まれ育ったたつの市やその周辺にはこれまで、悩みを相談するようなコミュニティーがなかった。行政も変わりつつある今、もっと気軽に話ができる場所をつくりたい」と思いを語った。(勝浦美香)

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