降雪による建物損壊が多発した兵庫県宍粟市北部では、屋根にブルーシートを掛けた民家が見受けられ、空き家は被害がいっそう深刻だった。飲食店の建物や設備も雪害を被り、営業に支障が出かねない状態となっている。市は現地調査を実施しておらず、全容は明らかになっていない。(村上晃宏)
「雪が解ける前にまた降り、積雪は層になっていた。とても重い雪だった」。市北部の住民は声をそろえる。
そうめん流し店「みやなか」(同市波賀町鹿伏)は建物の軒が数メートルにわたって崩れ、アーケードも斜めにゆがんでいた。電線がちぎれたため、現在も電話は不通という。
4月下旬の営業再開を目指しているが、運営する合同会社ツナガリ(同県小野市)の多田佳史会長(46)は「修繕費は高くなりそうだ。電話回線も早期に復旧しないと、営業にかなり影響が出る」と頭を抱えた。
罹災(りさい)証明書を発行する宍粟市税務課によると、家屋以外の建物などを対象に発行する罹災届け出証明書の要望が2件あった。担当者は「雪害は一部地域に限られるため個別対応になる。市民から被害を申し出てもらいたい」と話す。
多くの住民はJA共済などの損害保険に加入。市内の一宮、波賀、千種の3町を管内とするJAハリマの担当者によると、3月末時点で約200軒の保険申請があった。「被害の実態が把握できるのは雪が解けてから。まだ増える可能性はある」という。
屋根の一部に被害が出た男性(84)=同市=は「屋根に上って雪下ろしができる若者が少なくなった。高齢化が進む地域の課題でもある」と厳しい顔つきで語る。
市には「災害見舞金支給規則」があり、民家や商業店舗などには損壊状況に応じた見舞金が出る。受け取りを検討する市民は市秘書政策課(TEL0790・63・3139)に問い合わせるよう呼び掛けている。
