兵庫県宍粟市千種町黒土の黒土川を利用した小水力発電事業を興すため、60~70代の地元住民10人が合同会社を設立し、2022年度内の事業開始に向けて工事を進めている。生まれた電気は電力会社に売り、収益の一部は地域活性化や森林保全に活用する。31日まで事業費をふるさと納税を活用したクラウドファンディングで募っている。(村上晃宏)
小水力発電は河川や農業用水、上下水道といった流水のエネルギーを有効活用する。持続可能な開発目標(SDGs)や脱炭素につながるとして、県の補助事業になっており、黒土川の小水力発電は事業が始まれば、神戸市の六甲川に次いで県内2例目という。
宍粟市千種町黒土地区の自治会は2015年ごろから、自然資源を活用した地域活性化を模索した。黒土川では1923(大正12)年から約20年間、家庭の電灯用として供給する水力発電所が稼働していたことから着想を得て、小水力発電事業を思いついた。
住民たちは専門家らを招いた勉強会のほか、黒土川の水量や環境の調査を実施。また水路用パイプを通す際の地権者への説明といった準備を進め、県の補助や融資を受けた。
導入する発電機はオーストリア製のペルトン水車。ノズルから噴出した水流が、おわん形をした水受けのバケットに当たり、回転力を与えることで発電させる。1年間稼働できれば、約50世帯の年間使用量ほどの電力が発電できるという。
2019年9月、住民有志が黒土川小水力発電合同会社を設立。公務員やエンジニア、会社経営の経験者らが加わる。宍粟市の紹介で、再生可能エネルギー事業を展開する京都の企業もサポートに入り工事を進める。
新型コロナウイルスの影響で着工が当初より2カ月遅れの3月にずれ込んだが、合同会社の阿曽知世巳さん(72)は「貴重な環境資源を地元に還元したい。小水力発電事業のモデルケースになれば」と意気込む。
クラウドファンディングは「黒土川小水力発電プロジェクト」で検索する。
