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スプリング8の研究者・矢橋牧名さん
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スプリング8の研究者・矢橋牧名さん

 明るいリビングから重い扉を開けて防音室へ。グランドピアノに向かい、バッハなどクラシックを1時間弾いてから出勤するのが朝の日課だ。3月に兵庫県たつの市内であった演奏会では、かつての師・長尾洋史さんと連弾を披露した。

 ピアニストを目指して東京芸術大を受験したが夢かなわず、別の職に就いた-。こういう経験を持つ人は時折いるが、この人はさらに変わり種。東大で物理工学を学び、そのまま大学院に進学するか、芸大に入り直すか悩んだ。

 岐阜県で育ち、父は音楽教師。ピアノを習い、合唱やフルートにも熱中した。工学部に進んだのは、高校時代に米国の放射光施設を訪れて感激したから。大学の先輩の多くが大企業に就職していく様を見て迷いが生じた。「仕事の分野が細分化され、自分の世界が狭まらないか。音楽は人との関わりを広げてくれる」

 大学院入試と並行して長尾さんから個人指導を受け、受験した芸大は不合格。修士課程に進み、1996年、完成間近の放射光施設スプリング8に移籍した。全長1436メートル、世界最高性能の分析装置。科学立国を支える仕事は性に合った。化学、医学など専門以外の研究者から刺激を受けた。

 グランドピアノは就職2年後に買った。家族ができても練習は怠らず、プロの指導を今も受ける。「この年齢で教わる側になると、若手の論文に助言するとき役に立ちます」。防音室の棚には政治や哲学の大著がずらり。好奇心という名のビームラインは果てしなく伸びる。(直江 純)

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