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演劇のリハーサルで、アシハラノシコヲが地面に落とした飯粒を指さす場面=アクアホール
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演劇のリハーサルで、アシハラノシコヲが地面に落とした飯粒を指さす場面=アクアホール
「粒丘」として定説化した中臣山(手前2つ)。過去には半田山説もあった
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「粒丘」として定説化した中臣山(手前2つ)。過去には半田山説もあった
「粒丘」の候補地は中臣山が定説だが、半田山説、台山説もある。鶏籠山は中世に山城となった(国土地理院・デジタル標高地形図を加工)
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「粒丘」の候補地は中臣山が定説だが、半田山説、台山説もある。鶏籠山は中世に山城となった(国土地理院・デジタル標高地形図を加工)
揖保川の流れを背に、著書をPRする井上ミノルさん。背後には白鷺山(左)と台山がある=たつの市龍野町富永
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揖保川の流れを背に、著書をPRする井上ミノルさん。背後には白鷺山(左)と台山がある=たつの市龍野町富永
「ドキドキ『播磨国風土記』」で井上さんが描いたアメノヒボコ
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「ドキドキ『播磨国風土記』」で井上さんが描いたアメノヒボコ

 手延べそうめん「揖保乃糸」を知らなければ「揖保川」は難読地名だと思う。インターネット上には「損保川」なる誤字も。揖斐川(岐阜)や揖宿(鹿児島・指宿の別表記)ぐらいしか「揖」は登場しない。なぜ、これほど珍しい地名が付いたのだろうか。(直江 純)

 疑問の答えは、今月5日にアクアホール(兵庫県たつの市揖保川町正條)で上演される住民参加型の演劇「はりまのくに風土記~大地が生んだ・たつのはじめて物語」にある。2001年から続く「わくわく市民劇場」の一環で、小学生から60代までの24人が出演する。指導する松井麗子さん(49)が書いた脚本は「現代のツアー客が古代にタイムスリップした」との設定だ。

 「揖保里(いいほのさと)。土地の良さは中の中です」と松井さん。播磨国風土記の世界を観客は追体験できる仕掛けで、劇中、揖保の由来は「粒丘(いいぼのおか)」と明かされる。

 渡来系の神・アメノヒボコ(天日槍)が朝鮮半島からやって来る。土地を取られると心配したアシハラノシコヲ(葦原志挙乎)が丘を占領して食事をした。その際、地面に「粒」が落ちたので「粒丘」と呼ばれるようになった-という。

 「粒」とは「こめへん」からも分かるようにご飯粒のこと。まさか食事マナーの悪さが1300年以上も語り継がれるとは、神様もうかうかしていられない。

 では、なぜ「いいぼ」が「揖保」となったのか-。朝廷は地名に縁起の良い漢字2文字をあてるように命じたという。「揖」は「両手を組んで会釈する」などを意味する。地名以外で使われることは少ない。

 劇の上演は新型コロナウイルス禍による日程変更が続いたが、いよいよ本番が迫る。出演者たちは事前にゆかりの地を巡って歴史を学び、想像を膨らませて稽古に励んでいる。開道千結(ちゆ)さん(16)と藤川桜笑(はな)さん(13)は「古い言葉のせりふが難しいけど、少しずつ口が回るようになってきた」と笑顔を見せた。

 公演は5日午前11時と午後2時半からの2回。前売り、当日ともに800円。同ホールTEL0791・72・4688

■ご飯粒こぼした山はどこ? 定説は「中臣山」だが…

 アシハラノシコヲが飯粒をこぼした山はどこだったのか。柳田国男の実兄で国文学者の井上通泰が戦前の著書で「今の中臣山なり」と書いたため、これが定説化している。揖保町中臣(なかじん)の中臣印達(なかとみいたて)神社には「粒丘」の碑も立っている。

 しかし、市埋蔵文化財センター(新宮町宮内)の岸本道昭館長(63)はこの定説に疑問を持ってきた。粒坐天照神社(龍野町日山)は地元では音読みの通称「リュウザ」で親しまれているが、正式には「イイボニマスアマテラス」と読む。

 神社の背後の山は「白鷺山(しらさぎやま)」。近くの西宮山(にしみややま)古墳からは相撲の始祖・野見宿禰(のみのすくね)を思わせる力士の土器が出土している。岸本さんは2009年に「古墳や古代寺院、古代山陽道など重要な考古資料が集まっている」と白鷺山説を提唱した。

 しかし、研究を進めた結果、白鷺山のさらに背後にある「台山(だいやま)(的場山)」だと考えるようになった。粒坐天照神社の前身は台山にあったとされ「推古天皇の時代に稲の種が一粒万倍になった」と伝わっている。

 岸本さんは、台山の尾根に転がる丸い巨石にも注目する。「古代人が飯粒だと考えたのはこの石だったのでは」と推測している。

■風土記の世界 漫画で楽しむ たつの出身・井上さん出版

 たつの市に実家がある女性イラストレーター・井上ミノルさん(47)は4月、「ドキドキ『播磨国風土記』」(神戸新聞総合出版センター、1980円)を出版した。漫画を交え、楽しく歴史を学べる入門書だ。

 播磨の総合文化誌「BanCul(バンカル)」に連載された内容を再編集した。井上さんは15歳で神戸市からたつの市に転居し、28歳まで暮らした。現在は大阪市在住。連載中は、実家との往来の途中に播磨を取材して回った。

 井上さんは「播磨国風土記は堅苦しい出雲国風土記に比べて、おおらかな記述が魅力。今の播州人にも通じますね」と話す。神功皇后を「最恐ヒロイン」と名付けた漫画など、個性豊かなキャラクターが登場。「たつのは山や海など風土記の時代が想像できる自然が残っている」と語る。

 井上さんの代表作は2013年の漫画本「もしも紫式部が大企業のOLだったなら」。今年2月に第2弾「大鏡編」を出版した。24年のNHK大河ドラマは紫式部が主役で「タイミングの良さに驚きました」

 「ドキドキ『播磨国風土記』」は5日の演劇会場でも販売予定。同センターTEL078・362・7140

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