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「また、たつのに帰って来て」など、客の思いを込めた折り紙で「満開」のボード=イオン竜野店
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「また、たつのに帰って来て」など、客の思いを込めた折り紙で「満開」のボード=イオン竜野店
1994年のダイエー時代(下)からイオンへ。屋号や看板は変わっても市街地の小売業をけん引した(流通科学大学・ダイエー資料館提供)
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1994年のダイエー時代(下)からイオンへ。屋号や看板は変わっても市街地の小売業をけん引した(流通科学大学・ダイエー資料館提供)
赤とんぼ広場跡地への移転を語る徳永憲威理事
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赤とんぼ広場跡地への移転を語る徳永憲威理事
旧店舗時代の店構えを描いた版画家・乾太さんの作品を持つ小林實さん=たつの市龍野町下川原
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旧店舗時代の店構えを描いた版画家・乾太さんの作品を持つ小林實さん=たつの市龍野町下川原

 兵庫県たつの市最大の商業施設「赤とんぼ広場」(同市龍野町堂本)が31日の営業を最後に、半世紀近くの歴史に幕を下ろす。親子2代、3代にわたって買い物をした家庭も多く、核テナントのイオン竜野店は、ダイエーから屋号を替えた後も地元の暮らしを支えた。閉店まで10日余り。店内には、客の思い出を記したハート形の折り紙が木に見立てたボードにあふれ「満開」に。同店側は「地元に恩返しをしたい」と客たちを笑顔で出迎える一方、気になる跡地の今後も明らかになった。(段 貴則)

 売りつくしセールが続く同店の売り場には、複数のメッセージボードが並ぶ。「私の青春の場所」「赤穂からドムドムバーガーを食べに来ていた」「ヒーローショーを見たのが懐かしい」「自慢の店でした」。ダイエーやイオンの従業員、併設の専門店街に対する感謝の言葉とともに、客の思い出がつづられている。

 ボード前で足を止めた買い物客の女性(35)は「私も小学校高学年になったら、友達と出かける遊び場だった。雑貨店でかわいい文房具を買ったり、みんなでお金を出し合ってプリクラ(写真シール)を撮ったり」と語り、メッセージの数々に自身の思い出を重ねた。子育て中の今は、品ぞろえが魅力といい「離乳食に使える国産の生の白身魚を置いている店は貴重なのに…」と閉店を惜しんだ。

 一方、店で働く人も思い入れは強い。昨年春に着任した中村葵店長は、竜野が店長を初めて任された店という。「みなさんの思い出の中に竜野店が残り続けられるよう、最後まで従業員一同で勤め上げたい」と話している。

■跡地に「とくなが病院」が新築移転 「救急と小児科に力入れたい」

 赤とんぼ広場を所有・管理する「イチケン」は跡地利用策を公表してこなかったが、たつの市神岡町東觜崎の「とくなが病院」が敷地を取得することが分かった。運営法人の徳永憲威(のりたけ)理事(41)が取材に応じ、老朽化した同病院を新築移転し、救急機能を強化する方針を明らかにした。

 同病院は1994年に父の徳永金清(きんせい)理事長(67)が開設し、現在は一般病床56床、療養病床53床。移転に備えて今春に医療法人化した。グループの社会福祉法人「桑の実園福祉会」は、同市と東京・池袋の特別養護老人ホーム計2カ所などで介護事業を展開している。

 憲威氏は「東京の建設工事をイチケンが担当したことが縁になった。市内で不足している救急医療と小児科に力を入れ、地域に貢献したい」と話す。広場の建物は11月以降にイチケンが解体し、約2万平方メートルの敷地は来秋に引き渡しを受ける契約を結んでいる。

 新病院の開業は5年以内を目標とする。「私も含め住民には愛着のある場所。病院だけでなく地域に喜ばれる複合施設にできないか計画を練りたい」と意気込んでいる。(直江 純)

■専門店街の婦人服店 創業の地に戻り再出発

 赤とんぼ広場の全館閉館に伴い、イオン竜野店とともに営業を終える専門店街(19店舗)は、市内に移転する店と廃業する店とで対応が分かれた。婦人服店「コレクション」を営む小林實さん(71)は半世紀ぶりに創業の地・龍野城下町に戻る。11月1日のオープンに向け「日本最古の土蔵」も残る町家の改装に追われている。

 たつの市龍野町下川原の質屋跡に移り住んだ祖父が大正時代に帽子店を創業。父の代には「コバヤシ洋品店」として親しまれた。城下の中心だった下川原商店街は車社会になるにつれて客足が減り、揖保川対岸に移転する店が相次いだ。

 父は、地元資本も建設に協力した「赤とんぼ広場」を新天地に選んだ。店を継いだ小林さんも常連客に恵まれ、バブル景気やその後の不況をくぐり抜けてきたが、今年6月に閉館を知った際はショックだった。

 「あわてて空き物件も探したけど条件に合わない。だったら、下川原に帰ろうか」。旧店舗の土蔵は1656(明暦2)年の墨書きが残り、現存では全国最古とされる由緒ある建物だ。

 長年「龍野町並み保存会」でも活動し、今年から会長になった。「自分の店が空き家のままじゃ格好つかんわな」。城下は3年前に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建地区)になり、町家を改装した新店舗も増えている。

 「ピンチをチャンスにするしかない」。下川原でも専門店街でもライバルだった洋品店「ひまわり」が下川原に戻って来る。小林さんは「50年ぶりの大勝負。老け込んでいられませんな」と自分を奮い立たせている。(直江 純)

【イオン竜野店】たつの市内最大のショッピングセンター「赤とんぼ広場」の核テナント。前身は1973年12月、ダイエー竜野ショッパーズプラザとして開業した。食料品からファッション、家電までをそろえ、当時の新聞広告では「神戸のおしゃれも 姫路の便利さもやってくる」とアピールした。イオンによるダイエーの子会社化に伴い、2016年3月から現店名となった。

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