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約1200棟の山荘が点在する会員制の別荘地「播磨自然高原」=上郡町梨ケ原(播磨自然高原クラブ提供)
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約1200棟の山荘が点在する会員制の別荘地「播磨自然高原」=上郡町梨ケ原(播磨自然高原クラブ提供)
会員以外の出入りを規制するゲート。警備員が24時間常駐する=上郡町梨ケ原
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会員以外の出入りを規制するゲート。警備員が24時間常駐する=上郡町梨ケ原
別荘地内にある不動産業者の店舗=上郡町梨ケ原
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別荘地内にある不動産業者の店舗=上郡町梨ケ原
別荘に男性(66)が自作した天文台(本人提供)=上郡町梨ケ原
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別荘に男性(66)が自作した天文台(本人提供)=上郡町梨ケ原
神戸新聞NEXT
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 兵庫県最西部の丘陵地に西日本最大級の会員制別荘地がある。上郡町と岡山県備前市にまたがる「播磨自然高原」。広さは約1200ヘクタールあり、阪神甲子園球場でいえば300個分を上回る。「ゲーテッド・コミュニティー」と呼ばれるエリアで、住民以外の出入りをゲートで制限している。内部は一体どんな世界なのか。謎に包まれた別荘地を訪ねた。(地道優樹)

 ■住民以外立ち入り制限「セキュリティーが売り」

 のどかな田園が広がる上郡町梨ケ原地区の山道を車で登ると、別荘地「播磨自然高原」へと続くゲートが現れた。「関係者以外立入禁止」。目を引く看板の脇で、警備員が24時間態勢で目を光らせている。敷地内への出入りは2カ所のゲートに限られ、中の様子は見通せない。

 「このセキュリティーが最大の売りなんです」。別荘地を管理する一般社団法人「播磨自然高原クラブ」の管理部主任で、住民でもある和泉谷武玄(たけひろ)さん(61)が笑顔で迎えてくれた。同法人は別荘を所有する約千世帯が運営し、年会費は7万円という。

 和泉谷さんの案内でゲート内に入り、木々に囲まれた道路をしばらく進むと、赤れんが屋根の洋風住宅が目に入った。別荘地は標高422メートルの丘陵地にあり、約1200棟の山荘が点在。不動産業者の店舗などもある。さらに奥に進めばログハウスやヨーロッパの古城のような豪邸まである。

 ■1960年代に開発、バブル崩壊後も経営継承

 尾根に近づいた辺りで、レストラン(現在は休業)や卓球場がある共有施設「山の家」に着いた。2階からは広大な敷地が一望できる。「住宅街風の別荘地と違い、大自然に囲まれ、開放感にあふれている。あちこちで雲海が見えるんですよ」と和泉谷さん。会員だけが有料で利用できるプールやテニスコートもあり、リゾート感が漂う。

 開発・分譲が始まったのは1960年代だ。別荘地ブームを追い風に80年代には千戸を突破した。しかし、バブル崩壊を経て事業者が撤退。別荘の所有者有志が法人を立ち上げて経営を引き継ぎ、今に至る。

 現在の所有者は兵庫や大阪のほか、首都圏、四国在住の人もいるという。ほとんどが週末やシーズンにだけ過ごすが、約150世帯は定住しており、17年には広域連携自治会として、県境をまたいだ自治会も結成した。週に1回は移動販売車が訪れ、生活ごみも敷地内の集積所に置いておけば回収される。

 「家庭菜園や野鳥観察を楽しむなど、悠々自適な生活が送れますよ」と和泉谷さん。築30~40年の中古物件が大半で、土地代を含めて価格は数百万~4千万円ほど。確かに魅力的だが、若手記者にはなかなか手が届かない。

【ゲーテッド・コミュニティー】米国で1980年代以降に急増した裕福な階層向けの郊外住宅地。防犯のため、住宅地を柵や壁で囲み、ゲートで人の出入りをチェックする。日本では芦屋市臨海部に2000年代初頭に登場し、国内初として注目を集めた。警備員が常駐するなどセキュリティーの高さを重視するニーズがある一方、敷地外とのつながりが希薄になるといった指摘もある。

     ◇     ◇

 ■自前サウナ、趣味の天体観測…使い方、思いのままに

 別荘地といえば富裕層向けというイメージだが、播磨自然高原にはどんな人たちが通っているのか。

 西宮市の不動産業、横山英樹さん(50)は5年前、2階建てのログハウスを約2千万円で購入した。ステレオで大好きなハードロックを大音量で流したり、テレビドラマ「北の国から」の登場人物「五郎さん」気分でまき割りをしたり。2年前には自前のサウナ施設も完成し、誰にも気兼ねせずサウナ上がりに「整える」ようになった。

 40代半ばまで「仕事の成功だけが喜び」だったが、「便利やテクノロジーとは正反対の中に豊かさがあるのでは」と思うように。淡路島や滋賀県の別荘地も見て回り、最終的には「近すぎず遠すぎない距離感」が決め手になった。

 以前は週末だけ過ごしていたが、コロナ禍で導入したテレワークが有効だと分かり、今は1週間おきに自宅と別荘を行き来する。肉を回転器で焼くなど「住宅地では怒られること」を全力で楽しんでいる。

 会社を経営する姫路市の男性(66)は、趣味の天体観測拠点として購入した。屋根に自前のドームを造り、直径40センチの大型望遠鏡で星空を眺める。都市部に比べて人工の光が圧倒的に少なく「天の川が本当にきれいに見える」と気に入っている。

 50歳までは四国や長野まで車を運転して観測に出かけたが、今は仕事終わりに日帰りで観測もできる。「趣味に没頭できる理想の環境」と話す。

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