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スーパーで好物のキュウリをえり好みするガジロウ=福崎町南田原
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スーパーで好物のキュウリをえり好みするガジロウ=福崎町南田原
レジで精算するガジロウ。支払いにスマートフォンを使いこなす=福崎町南田原
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レジで精算するガジロウ。支払いにスマートフォンを使いこなす=福崎町南田原
宝くじ売り場の行列に並ぶガジロウ。ばらで10枚購入した=福崎町南田原
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宝くじ売り場の行列に並ぶガジロウ。ばらで10枚購入した=福崎町南田原
ベンチのモチーフになった町公認キャラクターのフクちゃん(左)とサキちゃん=福崎町高岡
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ベンチのモチーフになった町公認キャラクターのフクちゃん(左)とサキちゃん=福崎町高岡
ガチャに入っている10体のフィギュア=福崎町南田原
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ガチャに入っている10体のフィギュア=福崎町南田原

 兵庫県福崎町が生んだ最大のヒーローといえば、日本民俗学の創始者、柳田国男だ。「異論なし」という方も多いだろう。しかし、最近はリアルで怖いかっぱのガジロウにその座を奪われつつある。町内では、ガジロウが住民の暮らしの中にじわじわと入り込み、風景の一部になってきた。福崎町が「ガジロウのまち」になる日は近いのか。(吉本晃司)

スマホで支払いも

 福崎町内最大のスーパーでこの秋、身長約160センチの赤いガジロウが買い物かごを持ち、一般の客と同じように野菜や肉、酒を選んでレジに並んだ。かっぱの世界もキャッシュレス化が進んでいるのか、スマートフォンで支払いを済ませた。居合わせた買い物客は少し笑いながら、遠めからスマートフォンでガジロウを撮影。町職員もツイッターの公式アカウント「ガジロウさん」から発信した。

 スーパーに併設されている宝くじ売り場では、行列に並んで宝くじをばらで10枚買った。売り場は9月からガジロウをあしらったデザインに変更。スーパーに乗り付けた車も町が導入した電動レンタカーで、車体にはガジロウが描かれている。

 見た目が異様に怖いガジロウは当初、イベントなどで人に近づくと、大人は面白がっても子どもたちは怖がって泣いていた。それが狙いでもあったのだが、今はもう慣れたのか、「あっ、ガジロウや!」と寄ってくる子もおり、インパクトのあるキャラクターとして定着してきた。

少ない観光消費額

 福崎町はなぜ妖怪やガジロウをこれほど活用するのか。町地域振興課の成田邦造課長は「町の観光消費額の少なさや滞在時間の短さ、宿泊数の少なさ」を挙げる。交通の便のよさが逆に日帰りを増やしてしまい、消費額の伸び悩みに直結しているのだ。成田課長は「姫路から車で20分ほどで来られる。町内に宿泊施設が少ないので、もち麦を食べるとすぐ帰ってしまう」と悩む。

 ホテルなどの宿泊施設を急に増やすことはできないが、滞在時間を増やして消費につなげたい。そこで、町は次々と観光振興策を繰り出す。約3時間で妖怪フィギュアが製造できる3Dプリンターを辻川観光交流センターに置いたり、ベンチと同じ妖怪が出てくるガチャを設置したりして滞在時間を長くする仕掛けを増やした。

 ガジロウの電動レンタカーも、移動手段としてだけでなく、交流サイト(SNS)で拡散させて若い世代を呼び込むことも狙う。スーパーでの買い物もその一環だ。10月には、ガジロウに興味を示した女性お笑いコンビ「アルミカン」の赤阪侑子さんが、町とゆかりがないのに「ふるさと大使」に就くなどの展開もあった。

まずは妖怪、それから…

 10年ほど前には21万人台だった福崎町の観光客数は近年、40万人を超えるようになった。それはガジロウと妖怪を前面に出した効果と言える。「福崎がなんで妖怪の町なん?」。子どもたちが素朴な疑問を抱いたとき、柳田国男の出番だ。福崎町には、国男の偉大さが勉強できる施設がたくさんある。ぜひ訪れてみよう。

■非公認のワケは活動のしやすさ

 妖怪キャラクターとして有名になったガジロウは、福崎町の非公認キャラクターだ。同町には公認キャラクターとして黄緑色のかっぱ「フクちゃん」と「サキちゃん」が今も存在し、ゆるキャラブーム真っ最中の2009年から町のイベントなどで活動している。フクちゃんの頭はかっぱの皿、サキちゃんはもち麦麺(めん)が載っている。

 ガジロウはなぜ非公認なのか。町によると「非公認の方が民間事業者との活動がしやすいから」。公認だと、宣伝の意図はなくても特定の事業所との面白いパフォーマンスがしにくい。ゆるくない突き抜けた活動ができるのも非公認だからこそといい、当面は非公認のままでいくようだ。

■全部で10体 妖怪ガチャ

 福崎町は、妖怪ベンチのモチーフになっているかっぱや天狗(てんぐ)、一反もめんなど、10種類のフィギュアが入ったカプセル玩具の自動販売機「ガチャガチャ」を福崎駅前と辻川の観光交流センターに設置した。1回500円で1個ずつフィギュアが出てくる。

 ガチャに入っているのは猫また、鬼、スネコスリ、山姥(やまんば)、一反もめん、一つ目小僧、アマビエ、子啼爺(こなきじじい)、かっぱ、天狗の10体。高さ約4センチで、底面には指を挿せる穴が開いている。

 10月29日に設置し、11月中旬には既に半数近くが売れているという。10体はそれぞれ同じ数だけあるのでそろえやすそうだ。

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