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国内向けの「ごきぶりホイホイ」の歴代パッケージ=赤穂市坂越
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国内向けの「ごきぶりホイホイ」の歴代パッケージ=赤穂市坂越
1分間に600個の「ごきぶりホイホイ」を生産する工場。設備は半世紀近く現役で稼働する=赤穂市坂越
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1分間に600個の「ごきぶりホイホイ」を生産する工場。設備は半世紀近く現役で稼働する=赤穂市坂越

 カサカサ-。自宅でふいにアイツの気配を感じたとき、私たちは心をかき乱され、平静を保てなくなる。アイツとはもちろん、ゴキブリ。字面を見るだけでも不快なため、以下「G」と記す。太古の昔から地球で生き抜いてきた難敵を、私たちの身の回りからいかに遠ざけるか。その闘いの最前線が兵庫県赤穂市にある。G捕獲器分野で国内シェア94%を占める大ヒット商品を開発。改良に継ぐ改良で進化し、世界30カ国に向けて生産しているという。今春に発売50年を迎えると聞き、ホイホイと取材に出かけた。

 この商品は、虫ケア用品最大手のアース製薬(東京)が1973年3月に発売した「ごきぶりホイホイ」。同社は、100万匹のGを飼育する研究開発拠点と工場を赤穂に構えている。

 ホイホイ誕生時、捕獲器は、プラスチック製の容器で生け捕りにし、そのまま水に漬けて駆除するタイプが主流だった。同社は捕らえたGを逃がさず、目にせずに捨てられる商品の開発に挑戦。ハウス型の紙箱内部に粘着剤を塗るホイホイを商品化した。

 画期的な工夫が詰まっている。Gは体の前方に触角を伸ばして餌を探すため、ホイホイの入り口が平らな場合、触角だけが粘着剤に触れて逃げられてしまう。そのため、入り口を45度の坂道にすることで体ごと着地させ、平らな構造に比べ捕獲率は30倍高かった。

 発売後も改良を続けた。一つは粘着力のアップ。Gの足についた油分や水分を吸収する「足ふきマット」を採用したほか、粘着シートに凹凸をつけてGがもがくほど体がめり込むようにした。現在、ホイホイ一つの粘着力は、30キロの物体を持ち上げられるという。

 もう一つはGをおびき寄せる餌だ。肉と野菜、エビの粒に、同社が「特殊」と呼ぶ極秘の粒もブレンド。G好みの香ばしさを実現し、誘引力を高めた。

 ホイホイの進化を支えているのが研究だ。赤穂では日本に生息する63種のうち30種以上を飼育。中でも沖縄に多いGは、4畳半ほどの室内に60万匹がうごめく。近年、寒冷な北海道へも生息域が広がっているとみられ、全世界で約5千種類のGが確認されているという。

 同社の久保浩之・上席執行役員は「『捕れた!』という感動がヒットの要因。Gは賢いが、強い粘着力でどんな種も逃がさない。半世紀近く稼働する機械が生産を支えており、この先50年を見据えた設備更新に取り組みたい」と話す。

 ホイホイは「よく売れるように」「よくGが入るように」との思いが由来という。海外向けの商品名も「HOYHOY」を採用し、各国に浸透しつつある。ホイホイが世界共通語になる日も近い、かもしれない。

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