今年7月、生誕150年を迎えた福崎町出身の民俗学者・柳田国男。「日本民俗学」確立の原点には、家族の存在があったという。柳田国男・松岡家記念館(同町西田原)顧問で、柳田に関する研究を続ける東京学芸大学名誉教授の石井正己さん(67)=日本文学、民俗学=に、柳田の家族について寄稿してもらった。
■柳田国男・松岡家記念館顧問、東京学芸大名誉教授の石井正己さん寄稿
今年、柳田国男(1875~1962)の生誕150年を迎えた。1887年故郷の辻川(今の福崎町)を離れ、やがて官界や新聞界で活躍、その傍らで民俗学を構築した。1951年に文化勲章を受章、翌年田原小学校と福崎高等学校で講演をする。それまでは寂しい帰省だったが、初めて故郷に錦を飾り、郷土の偉人となってゆく。
そうした動きに促されて、神戸新聞社は60周年を記念し、柳田に家族や友人の思い出を語ってほしいと依頼した。東京の自宅で毎週2回、日記を手元に置いて、明治・大正・昭和を生きた思い出を饒舌(じょうぜつ)に語った。それらは58年「神戸新聞」に「故郷七十年」として連載され、翌年のじぎく文庫に入り、没後「故郷七十年拾遺」も発表された。