能登半島地震の発生から4カ月。あの日、地域医療の現場は機能喪失の危機に直面しながら、患者や負傷者の対応に追われた。断水し、検査機器が壊れた公立宇出津(うしつ)総合病院(石川県能登町)もそう。「応援が来るまで、できる限りのことをやろう」。勤務医が命を守る戦いを振り返った。(中島摩子)
取材に応じたのは、同病院整形外科の金子聖司医師(47)。元日の午後4時10分。「立っていられないほど」の長い揺れの後、隣の宿舎から病院へ駆けつけた。医師4人、看護師約15人が参集した。
5階建ての院内は壁がはがれ落ち、粉じんが立ちこめていた。海はすぐそば。「津波が来るぞ」。約60人の入院患者が4、5階にいる。エレベーターは停止。みんなで4階の患者を担架に乗せ、5階に運んだ。窓からは波が堤防にドーンと当たるのが見えた。
幸い津波は病院までは押し寄せず、電気も電話も通じたが、断水と貯水タンクの破損で数時間後には水が使えなくなった。これでは透析ができない。
採血の検査機器が棚から落ちてつぶれ、手術室は砂煙だらけで使用不能に。輸血を冷やす冷蔵庫も壊れた。