神戸新聞NEXT
神戸新聞NEXT

 兵庫県立病院の経営が物価高騰や人件費増などを理由に悪化し、直営の全10病院が2023年度、24年度と2年連続で赤字となる見通しであることが県病院局への取材で分かった。同局が設置された02年度以降、全10病院が赤字を記録するのは23年度が初めて。赤字幅も2年続けて100億円前後と、過去にない規模となっている。県は「危機的状況」として経営対策委員会を置き、対応を急ぐ。

 同局によると、これまで赤字の穴埋めに充ててきた内部留保資金は枯渇し、24年度末に約68億円のマイナスになる見込み。金融機関から一時借り入れしてしのぐが、現状が続けば25年度にも資金不足比率が初の10%超となり、企業債を発行するのに国の許可が必要になる懸念があるという。

 2年連続の赤字が確定的なのは、尼崎総合医療センター▽西宮病院▽加古川医療センター▽はりま姫路総合医療センター▽丹波医療センター▽淡路医療センター▽ひょうごこころの医療センター▽こども病院▽がんセンター▽粒子線医療センター-の県立全10病院。24年度だけでも、姫路が約25億円、尼崎が約23億円の経常赤字となる見込みだ。

 同局は、24年度当初予算で48億円の赤字を見込んでいたが、同年度の12月補正予算で、人事委員会勧告に基づく給与費増額で赤字は36億円増え、今年2月の補正予算でさらに44億円膨らんだ。赤字は06年度の62億円が過去最悪だったが、23年度は91億円、24年度は129億円と大幅更新する。

 新型コロナウイルス禍で落ち込んでいた病床稼働率は24年度、82・1%まで回復するが、急激な物価高騰を受けた薬品などの材料費増や給与費の上昇の影響が上回った。コロナ禍で、国から出ていた空床補償をはじめとする補助金が、23年5月に季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行されたことに伴い、段階的に廃止されたことも響いた。

 公立病院の収支悪化は全国的な傾向で、今年1月の総務省調べによると、公立病院の7割が赤字となっている。神戸市民病院機構も23年度、所管する4病院のうち、神戸アイセンター病院を除く3病院が経常赤字となった。神戸市立医療センター中央市民病院も約18億円の赤字を計上した。

 ただ、兵庫県立病院は、運営を外部委託している三つの指定管理病院も入れると病床数が計4394床となり、都道府県立病院で全国3位の規模(22年度)となる。長年進めてきた統合再編によって生まれた大規模病院もあり、物価や賃金の上昇による影響は深刻だ。県病院局は「急激な費用の上昇に、国が定める診療報酬が追いついていない」と話し、抜本的な経営見直しが必要という認識を示す。

 経営状況が変わらず資金不足比率が10%を超えると、病院経営への国の関与が増える。経営の自由度が制限される事態を避けようと、県は外部専門家による経営対策委員会が3月末にまとめる予定の報告書に基づき、対策を急ぐ方針という。(霍見真一郎)