公益通報やパワハラなどについて研修を受ける斎藤元彦知事(中央)ら=12日午後、兵庫県庁(撮影・笠原次郎)
公益通報やパワハラなどについて研修を受ける斎藤元彦知事(中央)ら=12日午後、兵庫県庁(撮影・笠原次郎)

 兵庫県は12日、告発文書問題を受け、斎藤元彦知事ら幹部職員の研修を実施した。第三者調査委員会や県議会調査特別委員会(百条委員会)の調査を踏まえ、公益通報制度やパワハラ対策の専門家が講義。4時間半の研修後、斎藤知事は「法の趣旨にのっとり適切に対応していくよう研修を生かしたい」と述べる一方、公益通報については「県の対応は適切だった」とあらためて正当性を主張した。

 一連の問題では昨年10月以降、県人事委員会や百条委が斎藤知事や幹部職員の研修実施を提案していた。内容は県人事課が計画し、公益通報▽冷静な部下の指導方法など「組織マネジメント力向上」▽個人情報保護制度-の3部構成。約30人が県庁で受講し、約90人が別会場のモニターで中継映像を視聴した。冒頭部分以外は非公開とされた。

 告発文書問題で第三者委は、内容を調べずに作成者を特定、懲戒処分した斎藤知事ら県の対応を公益通報者保護法違反に当たると認定。また消費者庁は、通報者の不利益な取り扱いを防ぐ体制整備義務について「内部通報に限定される考え方もある」との斎藤知事の発言に「公式見解と異なる」と指摘している。

 研修で公益通報の講師を務めた淑徳大学(千葉市)の日野勝吾教授は、通報者探索は「絶対的に禁止しなければならない」と強調。体制整備義務には外部通報も含まれるとの消費者庁の見解も説明し「通報内容を真摯に聞き、通報者を徹底して守り抜かなければ誰も声を上げなくなり、組織の存亡にも関わる重大案件が沈底化する」と話した。

 パワハラ防止の講義では、斎藤知事ら出席者同士で意見を出し合う演習形式の研修も実施。怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」の方法を学んだという。

 最前列でうなずいたりメモを取ったりしながら受講した斎藤知事。研修後、「職員とのコミュニケーション、傾聴することが風通しの良い職場づくりには大切と痛感した」と振り返ったが、公益通報については「特に内部通報をしやすい環境をつくって適切に運用していくことが大事と教わった」と述べるにとどめた。(井上太郎、若林幹夫)