神戸市中央区の商業ビルで2月、エレベーターのかごが上下する空間の底で男性が転落死したとみられる事故で、保守管理会社の男性社員が昨年6月に安全装置を切って修理し、約8カ月間そのままだったことが、国土交通省昇降機等事故調査部会の調べでわかった。同部会は23日までに調査報告書を公表。その後の定期的な保守点検が手順書通りに行われず、安全装置が切られていることに気づかなかった点も事故につながった、と指摘している。
報告書によると、作業員は昨年6月、地震感知器動作信号の誤作動を受け、出動。すべての階の扉が閉まっていないと人が乗る「かご」は動かない仕組みだったが、制御盤の配線を付け替えて安全装置を切り、扉が開いたままでもかごが動く状態にして作業した。
この作業は「通常とは異なる方法」だったため、安全装置の復旧を失念したまま、作業を終えたという。
事故が発生するまで、保守点検が昨年9月と12月の2回行われたが、作業員は手順書通りに点検せず、安全装置が切られていることに気づかなかった。いずれも「異常なし」と報告されていた。
死亡した男性は4階のカラオケ店を利用しており、エレベーターの4階扉はかごのない状態で開いたままだった。報告書は「扉で何かしらの物が挟まり、エレベーターが走行したのち、扉を人為的に開いたり物を引き抜いたりする動作で扉が開いた」と分析しつつも、同部会は「4階の扉がいつ、どのように開いたかは分からない」と述べた。
再発防止策として、マニュアルと異なる方法で作業する場合、作業を記録し通常の状態に復帰するよう指導することなどを挙げた。
この事故を巡っては、兵庫県警がエレベーターの管理会社側の保守点検体制に問題があった可能性もあるとみて、業務上過失致死容疑も視野に調べている。(末永陽子、名倉あかり)
























