明石市大蔵町の県道交差点付近に、全く同じ標識が三つ並んでいる。「黒橋下」「黒橋下」「黒橋下」-。まるで交差点名を連呼するように設置された標識たち。奇妙な光景だが、実はこれ、全国的な問題となっている経年劣化で文字が剝がれて読めない「交差点名標識」を減らすための先駆的な実験という。その狙いとは-。(杉山雅崇)
実験に取り組んでいるのは、兵庫県加古川土木事務所明石街づくり対策室(明石市中崎1)。標識の長寿命化のため、表面の素材や塗料を変えた3種類の標識を作り、経年劣化を調べている。なるべく費用をかけずに、できるだけ長持ちする高パフォーマンスの標識を自分たちで探そうと、昨年末、明石市内の県道交差点2カ所で実験を始めた。
一番上の標識には、県の規定で義務付けている反射材「広角プリズム」を使用。反射性能や耐久性は抜群だが、高価なのが難点だ。真ん中のものには、「カプセルプリズム」という素材を採用。反射も耐久性も広角プリズムには劣るが、設置コストを4割以上抑えられる利点がある。一番下の標識には、カプセルプリズムに市販の紫外線を防ぐ薬剤を塗った。
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標識の耐用年数は10年以上あるため、結果が分かるのはだいぶ先になるが、今回の実験の背景には切実な事情がある。
近年、標識の経年劣化で、交差点名の文字が消えたり、読みにくくなったりしている問題が、全国的に報じられるようになった。
兵庫も例外ではない。同室によると、県管理の交差点名標識は約9千枚に上り、うち同室の管理分は約380枚。県内の交差点名標識は、2006年の「のじぎく兵庫国体」に合わせ、05年ごろに大量に設置されたが、20年が経過し、次々と文字のはがれ落ちが目立ち始めているという。
「地名が見えない。はよ直して」。県には、県民からこうした苦情も多く寄せられているが、道路予算には限りがある。橋脚やアスファルトなど、「安全に直結する場所」が優先され、1枚交換するのに20~30万円かかる交差点名標識は、後回しになりがちなのが現状だ。
「心苦しいが、予算が足りず、劣化の進行に補修ペースが追いついていない」と同室の幾田正一郎・所長補佐。「だからこそ、持続可能な標識にしていかなければ」と、25年度から対策に取り組む。3種類の標識の実験はその一環だ。
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他の対策としては、なくても交通に問題のない、交差点名標識の「間引き」にも乗り出している。
対象になるのは、国道や県道ではない市道などの道路で、交差点の狭い道路側から見える地名標識を段階的に減らしていく。同市や明石署の意見も踏まえて、2026年度までに明石市内の地名標識の約3割に当たる約100枚を撤去する方針だ。これにより、年間約170万円の維持費削減になる試算という。
3種類の標識の実験は今後、他の地域でも検討していくといい、幾田所長補佐は「実験は、県が『読めない標識』に取り組んでいる姿勢のアピールにもなる。『明石発』の取り組みをこれからも進め、読めない標識を長期的な視野で減らしていきたい」と意気込む。























