神戸市西区の「王塚古墳」と近くの「幣塚(ぬさづか)古墳」で花を付ける遅咲きの桜が、中国に起源を持つ新品種であることが確認された。古代に持ち込まれたとされ、周囲から隔離された環境が品種の独自性を守る「タイムカプセル」のような役割を果たしたという。調査した樹木医は、樹勢が弱ってきた桜を守るため、接ぎ木で後継樹を育てている。(丸山桃奈)
二つの古墳は公園の中にあり、桜は毎年4月中旬、柵の内側で花を付け始め、来園者を楽しませる。通常のヤマザクラより開花時期は少し遅く、色も白ではなく薄いピンク。開花に伴う葉もほとんど見られない。
樹木医の志方清広さん(68)=加西市=から、遅咲きできれいな桜があると聞いたのは樹木医の藤原隆之さん(58)=西宮市=だ。「ヤマザクラだが特徴が違う」と興味を持ったが、両古墳は宮内庁が管理し、一般の立ち入りは禁止。2人は2019年春、柵の外から観察しやすい幣塚古墳を中心に調べ始めた。
24年まで時間をかけ、開花期と葉が生える時期に花弁や色、葉柄など計70項目を調べた。遅咲きで花びらの開きが弱く、徐々に赤色に染まるなどの特徴があり、標準的なヤマザクラとは大きく異なっていた。
志方さんは後継樹を育てようと、台風によって柵の外に飛んできた枝を持ち帰り、自宅近くの畑で挿し木を始めた。そこに付いた葉を使い、桜に詳しい千葉大学大学院の中村郁郎教授に分析を依頼。その結果、ヤマザクラの一種だが、DNAからは中国由来の桜との関係が確認された。このような型を持つヤマザクラの系統は、日本でこれまで見つかっておらず、中村教授は「この桜の先祖は、古代に中国より日本に持ち込まれ、古墳周辺で(独自性が)維持されてきたと思われる」と結論付けた。
この結果を踏まえ、藤原さんと志方さんは、同時期に咲く両古墳の計7本を「王塚姫桜」と名付けた。
古墳内で代替わりを繰り返し、少なくとも数百年、その独自性を保ってきたとみられる。桜は同時期に咲く品種と交雑することが多いが、周辺に同じ時期に咲く桜はない上、古墳の中には植樹などもされないため、隔離された環境が続いたという。
「まさにタイムカプセル。どの時代にどう入ってきたのか。ロマンですね」と藤原さん。枯れている部分が目立つようになったため、志方さんは接ぎ木で後継樹を増やし続けており、「将来は地域の桜として、小学校や中学校で育ててもらいたい」と語る。
























