熊本地震直後に神戸大を休学し、被災した故郷で活動する佐々木わかばさん=2016年夏、熊本県西原村(佐々木さん提供)
熊本地震直後に神戸大を休学し、被災した故郷で活動する佐々木わかばさん=2016年夏、熊本県西原村(佐々木さん提供)

 熊本地震が起きた10年前、大学を休学して被災した故郷に戻り、ボランティアとして活動した神戸大生がいた。熊本県西原村出身の佐々木(旧姓寺本)わかばさん(29)。現在は熊本に戻り、当時の経験を生かして防災イベントを開いたり、子どもの居場所づくりに取り組んだりしている。「田舎が嫌い」で地元を離れた学生の心境を、あの災害はどのように変えたのか-。(井沢泰斗)

 2016年4月16日の熊本地震「本震」の約1週間後、神戸大2年生で神戸市灘区に住んでいた佐々木さんはレンタカーに水と食料を積み込み、フェリーを経由して熊本に向かった。

 「親は『危ないから帰ってこなくていい』と。でもみんなが大変な思いをしているのに、自分だけ大学に通うのは違うと思って」

 本震で震度7の揺れに襲われた西原村では、1377棟が全半壊し、災害関連死を含め9人が犠牲になった。変わり果てた故郷の光景にショックを受けた佐々木さんは翌5月から約11カ月間、大学を休学する。

 頭をよぎったのは、地震直前にボランティアで訪れた、東日本大震災の被災地の風景だった。「震災から5年が過ぎても仮設住宅が残り、まちも寂しい雰囲気で…。『西原村も変わってしまうんじゃないか』という不安がありました」

 現地に入っていた「被災地NGO恊働センター」(神戸市兵庫区)の活動を手伝い、県外のボランティアを案内して住民の困り事を聞き取った。受けられる支援を紹介する情報紙を作って配り、料理上手な住民がボランティアに郷土料理を振る舞う催しも企画した。

 関西の大学に進学したのは「田舎が嫌で、地元を離れたかったから」。だが、その感情は故郷でのボランティア活動を通じて徐々に変化していく。「住民がみんなで地域をつくっていく関係性がいいなって。いつか地元のために働きたいと思うようになりました」

 20年に卒業し、丹波篠山市で山林資源の活用に取り組む会社に就職。神戸市で生まれ育った夫と結婚し、子どもも授かった。そして22年4月、新型コロナウイルス禍をきっかけに、西原村へUターンした。

 佐々木さんは子育ての傍ら、西原村の地域おこし協力隊員として活動し、防災スキルを身に付けるキャンプイベントを開催。地震で土砂崩れの現場を目の当たりにした経験から、親子で森づくりの大切さを学ぶ催しも開いた。

 現在は夫が洋食店を開いた隣の南阿蘇村に移住し、会社勤めをしながら、西原村の過疎地域で子どもや親が集える拠点づくりに挑戦している。「子育て世代のコミュニティーができれば、災害時にも役立つはず」と期待を込める。

 10年前、地震は多くの命を奪い、故郷を傷つけた。「地震があっていろんな出会いを経験し、生き方が変わったと思う。活動を通じてつながった仲間たちと、これからも地域のためにできることを頑張りたい」