大学生との面談で普段の生活習慣について話す参加者=コープリビング甲南
大学生との面談で普段の生活習慣について話す参加者=コープリビング甲南

 「グラウンドゴルフは良い運動ですね」「ご近所さんとつながりがあるのは素晴らしいですよ」-。高齢者の生活習慣を褒めまくる。そんな一風変わった健診に兵庫県内の大学生が取り組んでいる。名付けて「よいとこ健診」。問題点を指摘して改善を促す従来の健診ではなく、普段の生活習慣から健康に良い行動を見つけて伝えることで健康へのモチベーションを高めてもらう。(中村有沙)

 運営しているのは、神戸大と神戸学院大の教員や学生ら約30人でつくるプロジェクトチーム。6月下旬、コープリビング甲南(神戸市東灘区甲南町2)で開かれた健診には地域の高齢者約10人が集まった。

 まずは「手すりや壁をつたわずに階段を上っていますか」など、日常生活や地域活動への参加頻度を問う健診票に答えてもらう。その結果をもとに大学生が面談をするという流れだ。

 「84歳なんですね。僕は20歳なので4倍ですね」。面談が和やかな雰囲気で始まった。参加した男性の健診票では、生活習慣に関する質問項目で、「1人で外出しているか、週1回以上の外出をしているか」の問いが「はい」となっている。それを見た大学生は「自分の足で歩かれているのはすごいです。外出の頻度も素晴らしい」と褒めた。

良いところを話題に 判定は「◎」だけ 

 健診票の中のネガティブな回答には触れず、良いところだけを話題にする。最後は「地域内の協力関係」「生活に必要なこと」など約20の項目に対し、できていると判断したものに二重丸を記した健診結果を手渡して終わる。

 参加した神戸市東灘区魚崎南町の箕嶋まりさん(73)は「若い人が私の話や考えを聞いて反応してくれるのがうれしかった。健診結果を見ると、『私って結構頑張ってる、ええやん』って思えた」と満足そうだ。

 学生側にも好評で、神戸大経済学部3年の中濱佑太さん(20)は「人生の大先輩だからこそ、自分とは違う視点の話を聞けるのが面白い。視野が広がる感じがして、社会に出てからのコミュニケーションの役にも立ちそう」と話す。

 よいとこ健診は2018年、姫路市夢前町の住民向けに始まった。地元企業が地域貢献の一環で、神戸大に健康づくりの取り組みを考えてほしいと依頼したのがきっかけ。大学院医学研究科の岡山雅信特命教授が応じ、高齢者を元気づけるには良いところを褒める加点式の健康診断が有効ではないかと発案した。医学部と経済学部を中心に、甲南女子大などほかの大学の学生らも加わり、年1~2回のペースで開催した。

 現在は夢前町に加えて、開始当時から関わる神戸大大学院経済学研究科の山岡淳准教授(42)が、25年3月から大学のある神戸市灘区へ場所を移して開催。これまでに6回開き、さらに取り組みを広めようと、今回は東灘区で実施した。

 「高齢者の健康増進はもちろん、学生と高齢者が互いの世代への理解を深められる。さらに学生が社会に出た後、多様な世代と関わるための力になる」と山岡さん。「僕たちだけでなく、この取り組みを良いと思ってくれた方が各地で開催してほしい。子ども食堂のように広がっていくのが目標」と語る。