内閣府が、今年の障害者週間(12月3~9日)に合わせて公開した啓発動画で、手話が脳の活性化や記憶力向上につながると科学的裏付けのない内容を紹介していたことが分かった。交流サイト(SNS)上で、手話が聴覚障害者の生活に欠かせない意思疎通の手段だとの理解が欠如していると批判が相次ぎ、削除した。関係者が25日、明らかにした。

 内閣府は例年、公式サイトで動画を募集している。今年は7件の応募があり、表現や事実関係を精査して、全件とも公開は問題ないと判断していた。

 「聞こえない世界とつながる」と題した動画は、東京都内の手話普及団体が制作。団体代表者らが「手話の動作を見ることで注意力・判断力が高まる」「指を動かすため、手先が器用になる」などと説明していた。

 政府内では、手話と脳の活性化や記憶力向上の因果関係は確認されていない。3日の公開直後から、SNS上では「ろう者にとって手話が『言語』だという認識が欠如している」「健常者目線だ」と反発が広がり、内閣府は5日に取り下げた。