映画「男はつらいよ」で主人公の寅さんを演じた渥美清さんが亡くなって今年で30年。寅さんの気配を探し、物語の舞台、東京都葛飾区柴又を歩いた。
京成金町線柴又駅前に立つ寅さんの像が見つめる先に続く帝釈天参道。うなぎ、くず餅、たんきりあめ…。カーブを描いて風情ある店が並ぶ商店街には、行く先が見えないワクワク感がある。
寅さんの実家である団子屋のモデルになった「高木屋老舗」を訪ねると、店内には先代の女将らが渥美さんや歴代マドンナと納まる記念写真がずらり。眺めながらお団子セットに舌鼓を打った。
帝釈天を経由し向かった「葛飾柴又寅さん記念館」では旅をテーマに謎解きゲームのような特別展示があった。寅さんの妹さくらたちの証言を基に寅さんの行方を追うのが楽しい。旅に出てしまったかと思いきや、まさかの展開に胸が躍った。
中庭にはシリーズ全作のロケ地が網羅された巨大すごろくが出現。さいころを転がす女子大生たちの声が響いていた。寅さんへのメッセージを書くコーナーには「元気?」「いつか会いたいな」と思い思いの言葉も。
駅方面へ戻り、渥美さんが通ったという「酒場 春」ののれんをくぐると、女将の渡辺かおるさん(73)が迎えてくれた。気さくな渡辺さんにかかると、誰もが常連のようにくつろげてしまう。渥美さんが好んだ納豆オムレツを注文し、思い出話に耳を傾けた。
渡辺さんの次女が生まれた時、名前を「さくら」にすると伝えると、渥美さんは「さくらは俺の妹だからやめときな」と笑い、「すみれ」と名付けてくれたという。「渥美さんが『商いは飽きちゃだめ』と言うから続けてきた。もう開業47年」と笑う顔がまぶしかった。
帰るのが惜しくなり、夕暮れの江戸川沿いへ。寅さんのように土手に寝転ぶ人はいなかったが、親子が並んで走り、カップルがたたずむ風景は映画のシーンと同じだった。
【ちなミニ】「酒場 春」のランチは焼きそばが人気。























