フジロックフェスティバルに登場したFrikoのニコ・カペタン=7月、新潟県湯沢町(撮影:岡利恵子)
 フジロックフェスティバルに登場したFrikoのニコ・カペタン=7月、新潟県湯沢町(撮影:岡利恵子)

 2年前のフジロックフェスティバルで、新人バンドとして破格の扱いとも言えるグリーンステージに出演し、音楽ファンの心をつかんだアメリカ・シカゴのロックバンドFriko(フリコ)。彼らがニューアルバムを携えて、再びフジのステージに立った。ボーカルのニコは「ステージの自分たちに自信が持てるようになって、音楽に浸ることができた」と振り返る。彼らにとってフジロック出演はどんな意味を持つのか。あれから2年、どんな変化があったのか。出演翌日のメンバーに東京で話を聞いた。(取材・文 共同通信=森原龍介)

▽「涙がこぼれそう」

-2度目のフジロックは3日目の夕方、レッドマーキーでの素晴らしいショーでした。前回、日中のグリーンステージも良かったですが、今回はいい時間帯でしたね。今年のベストアクトに挙げる人もいました。

デイヴィッド(ベース) 前回のフジロックは僕たちにとって初の海外公演で「火中に身を投じるような挑戦」だったんです。

ベイリー(ドラム) この2年、一緒に演奏をしてきて、十分に準備ができていたと思います。フジロックに戻ってくることができて光栄でうれしかったですし、素晴らしい時間を過ごすことができました。

コーガン(ギター) 照明があって、夜に演奏するのも本当に楽しかったです。照明があると、何もかもがずっと大きく、迫力あるものに感じられますね。

-4月にニューアルバム「Something Worth Waiting For」をリリースしました。ファンの前で新曲を演奏していかがでしたか。

デイヴィッド フジロックのようなフェスでの演奏経験、ライブバンドとしての経験が曲作りに大きく影響を与えています。2年前、私たちのターニングポイントとなった大きなショーを行ったフジロックで再び演奏できて、報われたような気がしました。

-ベイリーもギターを持って前に出てきて演奏していました。どんなお気持ちでしたか。

ベイリー 本当に特別な気持ちです。演奏していて、涙がこぼれそうになりました。フジロックでまた演奏できて、ここに戻ってこられて感慨深かったです。フジロックは私たちにとって象徴的な意味があります。2年前のフジロックが私たちにとって初めての4人編成のライブだったからです。だからこそ、昨夜のライブは一区切りついたような、本当に特別な体験でした。

 演奏中はつい目を閉じてしまうんですが、顔をしっかり上げておきたかった。その場の空気をしっかりと味わい、その瞬間をありありと感じていたいと思ったんです。

▽飼っている子犬が成長しても…

-ニコはどうですか。今回はキーボードを弾きながら歌う曲もありました。

ニコ 最高でした。(キーボードで弾き語りをする)「Certainty」は特に気に入っています。自分たちが心から情熱を注げる曲や、みんなが好きな曲をたくさん盛り込んだ長いセットを組めるようになって、私たちも楽しいですね。長いショーの間もずっと観客を惹きつけられていると感じています。

-ファーストアルバムは、狭い部屋に押し込められて、どこにも行き場がないような憂鬱さが印象的でした。新しいアルバムでは、曲を書くニコが、どこか明るく開けた場所に出てきたように感じる瞬間がありました。何か変化があったのでしょうか。

ニコ 単純にツアーでたくさん歌って自信がついたんです。感情に頼るのではなく、自分の技術に自信を持てるようになりました。それが大きなポイントです。ただ、歌詞については、憂鬱さを抱えつつ、僕たちが直面している問題を解決する糸口を探ろうとしているという意味で、どちらのアルバムも同じような立ち位置かもしれません。

-ベイリーはニコの変化を感じますか?

ベイリー 彼は常に誠実な作詞家であって、1作目と2作目で何が変わったという訳ではないんです。より洗練されたというぐらいで、私からみればいつも素晴らしいですから。

ニコ 飼っている子犬が成長しても、ずっと一緒だから気付かないみたいなことでしょ(笑)。

ベイリー この瞬間に変わったとは言えないよ。いつも刺激を受けてるからね。

▽大きな影響を受けたイアン・カーティス

-ショーの最後に、ジョイ・ディヴィジョン/ニュー・オーダーの「Ceremony」をカバーしました。亡くなったイアン・カーティスが歌ったバージョンですね。確かにニコの声は彼の声をほうふつとさせます。なぜこの曲を選んだのでしょう。

ニコ 僕たち全員のお気に入りの曲ですから。ジョイ・ディヴィジョンには、僕たちはとても大きな影響を受けてきました。

デイヴィッド 「Ceremony」ほど演奏したい曲は他に思いつきません。そもそも僕が初めてベースを弾いてみたいと思ったきっかけの一つがこの曲なんです。イアン・カーティスは謎めいた魅力を持つ唯一無二のパフォーマーだけど、ニコが彼のようなスタイルで歌う姿を目の当たりにして、すごく胸が熱くなりました。17歳の頃の自分には、いつか日本でこの曲を演奏し、親友がイアン・カーティスのような役回りを担うなんて想像もつかなかったことです。本当に美しい光景でした。

-その場でセットリストに追加したんですか?

ベイリー あの曲は今年4月のアルバム・リリース・ライブで初めて披露して、その後も何度か演奏したんです。今回も時間があればやろうと思っていて、時間を確認したら「あと4分ある」ということだったので演奏することにしました。

-苗場での滞在時間は限られていたと思いますが、楽しめましたか?

デイヴィッド 僕たちの前に出た(日本のバンドの)「the cabs」は19歳の頃に自分のアルバムを作る時にドラムの音なんかを参照していたんだ。一緒のステージに立てるなんて現実じゃないみたいだったよ。フジで見られたのは彼らのステージだけだけど、それはありがたかったな。めちゃめちゃクールなステージだったよ。

▽高円寺・パル商店街がクール

-会場は慌ただしかったようですが、日本滞在中は少しゆっくりできたんですか?

コーガン レコードをたくさん買ったよ。スーツケースが壊れてしまって、入れるスペースがないのが心配なぐらい。あと、たくさん歩いてたくさん汗をかいたね。

デイヴィッド 高円寺に行ったんだ。パル商店街がすごくいい。ああいう場所はアメリカにはないからね。すごくクールだったよ。

-ニコは日本語を勉強しているんですよね。ステージでの曲紹介を日本語でしていましたし、サウンドチェックでも「ベースもう少し」とか、日本語を使ってました。

ニコ 前回のフジロックから帰って、デイヴィッドと日本語を習い始めたんだよ。彼は忙しすぎてやめちゃったけど。(日本語で)「日本語の先生、お名前はフジ先生」。偶然の一致だね。

-滞在中に勉強した日本語を使う機会はありましたか?

ニコ ホテルの近くにある小さな居酒屋に行って、80歳ぐらいの男性と話をしたんだ。彼は少しだけ英語がしゃべれたから、僕のブロークンな日本語と彼のブロークンな英語で話ができて、とても楽しかったよ。

-お疲れのところありがとうございました。また日本でお目にかかれる日を楽しみにしています。

デイヴィッド 日本は本当に気に入っていて、戻ってくる機会があれば逃さず来ます。一時期は、ニコと2人で物件情報を互いに送り合っていたこともありました。それくらい、日本が大好きなんです。