日本では2022年、約17万9千組が離婚した。同じ年に結婚した夫婦約50万5千組の3分の1に相当する。戸籍上は配偶者だが、関係がこじれてしまった夫婦も少なくない。ぎくしゃくする中、子どもをどう育てるかは切実な問題だ。
離婚後、親権を持った親の多くは必死に家計をやりくりしている。「つい子どもに厳しく接してしまう」と悩む人も多い。近年は子どもが「毒親」と決めつけ、一方的に縁を切るケースも耳にするようになった。
苦労して育てた子どもに絶縁されるつらさは筆舌に尽くしがたい。どうすれば断絶を防げるだろうか。
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毒親は、米国の心理治療家スーザン・フォワードが1989年に出した著書「毒になる親」が語源とされる。子どもの人生を支配し、健康な発達を阻害する親を指す。15年には同じ著者の「毒親の棄(す)て方」が邦訳され、母娘関係の難しさがクローズアップされた。
「危機を招かないためには、子どもを別の人格と認めることが重要です」。親子のカウンセリングに長年携わってきた芦屋大特任教授、林知代さんはそう指摘し、典型的なケースとしてある親子を挙げた。
母親は社交的な性格だが、心理的に不安定で感情の起伏が激しかった。幼い娘を相手に、しばしば夫への不満を赤裸々にぶつけたという。
娘は、母親の考えや感じ方を自分のものと感じていた。「自分がない」状態を強いられ、「支配するかされるか」という寒々とした人間関係しか結べなくなっていった。
■父も母も独自の役割
娘が思春期の頃に両親は離婚し、母子の暮らしが始まる。24時間一緒にいられる約束のはずが、母は家計を支えるため働くようになった。
「約束が違う」。裏切られたと感じた娘の怒りはすさまじく、手がつけられないほど暴れた。
「母なりに娘を愛したが、所有物のように扱ったため愛着形成がうまくいかなかった。そのうち、母親は娘を支配する存在から支配される側に変わり、関係は破綻しました」
娘は父親と暮らし始めたが、その生活は緊張に満ちていた。愛情を試すような行動を繰り返し、小さな約束も守られなければ激しく憤った。
父親は苦悩したが、林さんのアドバイスを受けながら、娘の気持ちを受け止め続けた。母親の価値観の影響で不信の目を向けていた娘は、日々の暮らしを重ねる中で少しずつ信頼感を抱き始め、心が成長していったと林さんは強調する。親と自分は別の人間だと気付いたようだった。
幼い子どもは母親とつながりが深く、離婚後も母に育てられるケースが8割を超える。だが、父親の方が相性が良いこともあるという。
「特に子どもが父親に似ている場合、母親は元夫を重ね『自分と合わない』と感じることが少なくない」と林さん。「そもそも父親は母親の代理ではない。独自の役割を発揮すべき場面もある。できれば離婚後も、両親共に子育てに関わる方が望ましいし、お互い気持ちが楽です」
この娘は現在、夫と子どもに恵まれて幸せに暮らす。かつての重い愛着障害の影響はすっかり影を潜めているという。
■協力関係を築けるか
政府は26日に召集予定の通常国会で、離婚後に父母の双方が親権を持つ「共同親権」を認める民法改正案を提出する方針だ。現在は父親か母親のどちらかが持つ制度だが、双方で担える選択肢を加える。離婚後に別居した親と子の面会交流を促す法改正も検討している。
しかし、共同親権には慎重論が根強い。ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待の加害者が親権を持つ危険がぬぐえないからだ。子どもに危害を加える恐れがあれば、親権から排除するのは当然である。
共同親権を子どもの幸せにつなげるには、感情のもつれを乗り越え、父母が子どもの利益を最優先して協力し合う関係を築くことが不可欠だ。第三者の仲介など社会全体で支える仕組みを構築する必要がある。























