自民党は、参院選での大敗を総括する両院議員懇談会を開いた。石破茂首相(党総裁)は「決して政治空白を生まないよう責任を果たしたい」と述べ、改めて続投の意向を表明したが、出席者からは責任を追及し退陣を求める声が相次いだ。
昨年10月に発足した石破政権は衆院選に続き、東京都議選、参院選と立て続けに敗れた。参院選では、首相が目標に掲げた「非改選を含め過半数」に届かず、衆参両院での少数与党という状況を招いた。民意を反映すれば、退陣するのが憲政の常道である。
ところが報道各社の世論調査では首相は「辞任すべきだ」と「その必要はない」との回答が拮抗(きっこう)している。大敗の要因は「政治とカネ」を巡る問題への自浄能力のなさや、長引く景気の低迷からの脱却に有効な手を打てなかった点も大きい。いずれも自民党が長く抱えてきた問題であり、全てを首相に押し付けて解決するわけではない。自民党そのものへの根深い不信や失望が根底にあると真摯(しんし)に受け止めねばならない。
約4時間半に及んだ懇談会では、森山裕幹事長が参院選総括委員会を設置し、8月中をめどに報告書をとりまとめ、引責辞任する考えを示唆した。その時点で首相も自らの進退を判断するべきだ。
懇談会を終えても党内の「石破降ろし」が収まる気配はない。首相に批判的な旧安倍派や旧茂木派、麻生派の有志議員らは、重要事項を議決する両院議員総会の招集に必要な数の署名を集めたとし、党執行部は近く総会を開催する方針を決めた。党則に基づき国会議員などの過半数が総裁選の前倒しを求める事態になれば、事実上のリコール(解職請求)であり混乱は避けられない。
違和感が拭えないのは、連敗の主因となった派閥裏金事件に関与した議員が「石破降ろし」に明け暮れる状況だ。首相が真相究明や政治改革に指導力を発揮できなかったのは事実だが、事件の当事者が自らを棚に上げて責任転嫁する姿は見苦しい。
旧態依然とした党内抗争にかまけていては、さらに自民党離れが広がるだろう。党の解体的な出直しなくして信頼回復はあり得ないと全ての議員が自覚する必要がある。
首相が交代しても衆参で少数与党である状況は変わらない。法案や予算案を成立させるには与野党間の協力が不可欠だ。多党化が進む野党とどう連携し、どんな政策を実現させるのか、建設的な議論ができるよう党の体制を築き直すのが比較第1党の責任である。
内外に懸案が山積する中で国政に停滞は許されず、国民生活に影響を及ぼす事態はあってはならない。