定例会見で話す斎藤元彦知事=17日午後、兵庫県庁
定例会見で話す斎藤元彦知事=17日午後、兵庫県庁

 兵庫県の斎藤元彦知事らに対する告発文書問題を巡り、昨年9月に県議会が全会一致で斎藤知事の不信任を決議してから、19日で丸1年となる。斎藤知事は失職後の出直し選挙で再選したが、第三者調査委員会によるパワハラ認定や公益通報者保護法違反の判断、さらには複数の刑事告発が続いた。混乱した県政は融和に向かわずに対立や分断の構図が続く。県議会でも会派の姿勢に温度差が生じつつある。

 「知事の資質を欠いていると言わざるを得ない」。昨年9月、県議会は不信任決議を全会一致で可決した。告発文書を巡る斎藤知事の対応に批判が集まった。ところが11月の知事選で斎藤知事が再選すると、逆に県議会側が交流サイト(SNS)を中心に激しい非難を浴びる事態になった。

 一方、斎藤知事の側も再選直後に、PR会社のブログ投稿でSNS運用での公選法違反の疑いが浮上。今年3月には第三者委が告発文書問題での県の対応を「違法」と断じ、知事の職員へのパワハラも認定した。

 斎藤知事は再選後、「議会としっかり意思疎通を図る」と述べたが、県議会調査特別委員会(百条委員会)の報告書を「一つの見解」と切り捨て、議会と意見交換の場を持ったのは4月の代表者会の一度きり。多くの会派から「知事は何も変わっていない」「対話の姿勢が見られない」との不満が漏れ、地方自治で「車の両輪」とされる首長と議会の関係は修復の兆しがみられない。

 議会側が注視するのは、斎藤知事に関する刑事告発の行方だ。捜査結果によっては、再び責任追及の声が強まる可能性がある。

■各会派の姿勢は?

 最大会派の自民党(36人)の谷口俊介幹事長は「(知事再選という)民意は尊重する。是々非々で県政を支えていく」という構えを強調。「捜査結果を見ながら進むべく方向を考えたい」と2度目の不信任決議の可能性にも含みを持たせる。ただ、問題の長期化に会派内には「これ以上の混乱はごめんだ」と厭戦ムードも漂い、意思統一の見通しは不透明だ。

 第2会派の日本維新の会(18人)は、自民と一緒に初当選時の斎藤知事を推薦し、距離感は近かった。昨年の不信任決議は賛成したが、7月の参院選では兵庫維新の会のX(旧ツイッター)で「斎藤知事とともに改革を進める」と共闘路線を打ち出した。門隆志団長は「不信任はもう2度と出したくない。民意は示されており、文書問題はもう終わったこと」と語る。

 百条委の非公開の審議内容を外部に漏えいするなどして処分され、離党した元維新県議の3人がつくる会派「躍動の会」も全面的に「斎藤支持」を掲げる。

 第3会派、公明党(13人)の越田浩矢幹事長は「文書問題と、住民に直結する県政は切り分けて考える」としつつ「捜査結果を踏まえて、議会としてどう総括するかが課題」と議会側の行動が必要とする立場だ。

 一方、第4会派のひょうご県民連合(8人)は斎藤知事に対し「信頼関係は築けない」と反発し、共産党(2人)も「不適格は明白」と辞職を求めている。

 自民党のあるベテラン県議は「捜査機関の結果を受けても、議会側が再びアクションを取れるとしたら2年後の統一地方選。もしくは3年後の知事選を見据えた動きになるのではないか」との見方を示している。

 斎藤知事は17日の定例会見で議会との関係改善策を問われ、「対話の方法はさまざまだが、私はあまり会食に行くほうではない。代表質問や一般質問など議会の場で、政策を通じた意思疎通を大事にしたい」と話した。