石破茂首相の退陣表明を受けた自民党の次期総裁選びが事実上スタートした。総裁選は所属国会議員と党員・党友が投票する「フルスペック型」で、22日告示、10月4日投開票の日程で実施される。
参院選の大敗から既に50日余りが経過し、さらに「政治空白」が長引くことになる。物価高にさらされる国民生活への影響は避けられない。政権を担っている党として、一刻も早く政治の停滞を解消すべきだ。
トップをすげ替えるだけでは離反した支持は取り戻せない。参院選の総括で掲げた「解党的出直し」をどのように実現させるのか。総裁選にこれだけ時間をかけるのであれば、多様な声を反映した政策論争の場としなければならない。
これまでに茂木敏充前幹事長が立候補を正式に表明し、小林鷹之元経済安全保障担当相、高市早苗前経済安保相、林芳正官房長官、小泉進次郎農相も出馬の意志を固めている。衆参両院で少数与党の現状では新総裁が首相に選ばれる保証はなく、野党の協力なしには予算も法案も通らない。政策実現に向け、野党との連携の在り方も争点となる。
石破首相のように野党と政策ごとに協議を重ねるのか、それとも新たな連立を模索するのか。総裁選では日本の将来像を示し、混迷の先を見据えた政権の枠組みを論じ合うことが求められる。
何より自民に対する国民の根強い不信への反省が不可欠である。参院選総括では物価高対策の立ち遅れや、派閥裏金事件に象徴される「政治とカネ」の問題に有効な解決策を示せなかったことを敗因に挙げた。
裏金問題の解明は進まず、企業・団体献金の見直しも棚上げ状態だ。「石破降ろし」に続き、次期総裁選びでも裏金問題を引き起こした旧派閥を軸とした動きが見られる。
「派閥政治」に先祖返りし、国民不在の政争を繰り返すなら、有権者の支持はますます離れるだろう。こうした古い体質に国民の厳しい目が向けられていることを肝に銘じる必要がある。
石破首相は看板政策とした防災庁設置や賃上げ、農政改革などの成果を誇ったが、地方創生など多くの課題は道半ばだ。中途半端に終わらせず、誰が新しい総裁になっても施策を着実に進めてほしい。
総裁選の影響で臨時国会の召集は遅れる。参院選で現金給付を公約した与党と消費税減税・廃止を訴えた野党との隔たりを埋めるのは容易ではない。いずれにせよ財政健全化の議論は欠かせない。コメの価格高騰やトランプ関税への対応も待ったなしだ。総裁選を通じて山積する課題への処方箋を示してもらいたい。