スポーツ観戦におけるマナーをどう守っていくのか。運営側と観戦する側が改めて考える機会としたい。
8月30日にあったJリーグ1部・ヴィッセル神戸のホーム試合で、神戸のサポーターが振っていた大旗と相手チームの選手が接触する恐れが生じた。選手にけがはなかったが、クラブは応援者側と協議し、旗の使用を一定期間制限した。再発防止策として応援フラッグの運用ルールを見直し、旗のサイズや安全な掲示方法を明示した。
応援用の大旗は金属製ポールの長さが4メートル以上ある。サポーターが応援席の前方で掲げているが、本拠地のノエビアスタジアム神戸はピッチと客席との距離が近く、柵を越えて旗が振られるケースが少なくない。
今回は旗に絡まったボールを振り払おうとした際に、選手と接触しそうになったという。故意とは認められなかったが、選手を危険にさらしかねない。クラブの姿勢が問われるのも当然だ。観戦ルールを明確にし徹底した上で、違反した場合は毅然(きぜん)とした態度で臨む必要がある。
観客が選手のプレーを妨げる行為は他競技でも起きている。
古くは1995年、プロ野球阪神の新庄剛志選手(現日本ハム監督)が放った本塁打性の打球が応援旗に触れて二塁打と判定され、球場が騒然となった。大谷翔平選手がいるドジャースとヤンキースが戦った昨季のワールドシリーズでは、外野席の観客が身を乗り出して捕球し、大ブーイングを浴びた。真剣勝負に水を差し、見る者の楽しみを損なう行為は慎むべきだ。
連日熱戦が繰り広げられている陸上競技の世界選手権東京大会では、短距離種目のスタート時、スタジアムは静寂に包まれる。重圧の中で集中力を研ぎ澄ます選手は、わずかな物音でもレースを左右される。一方で、跳躍種目は客席からの手拍子が選手をもり立てる。最高のパフォーマンスを引き出すため、観客の協力が欠かせない。
応援に熱がこもるのは、どの競技でも一緒だろう。大事なのは節度を持って選手たちを後押しし、誰もが安心して客席に集える環境を整えることだ。運営側も見る側もマナー向上にしっかり向き合っていきたい。