パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡り、イスラエルとイスラム組織ハマスが和平計画の第1段階に合意し、10日に停戦が発効した。停戦は過去に2回成立したが、破棄された。ガザの死者は6万7千人を超え、人道危機は極限化している。合意を恒久平和につなげねばならない。
イスラエル軍は既に合意ラインまで撤退した。ハマスはその後、72時間以内に人質48人全員を解放し、イスラエルは拘束しているパレスチナ人約2千人を釈放する。まずは着実な履行を求める。
ガザの住民たちは苛烈な攻撃にさらされ続け、深刻な飢饉(ききん)に直面している。イスラエルの人質も境遇は同じだ。国際機関が中心となって支援体制を速やかに築き、援助を行き渡らせることが不可欠である。
和平計画の第2段階では、ハマスの武装解除やイスラエル軍の撤退について協議する。どちらを優先させるかなどで双方の溝は深い。だが、交渉不調を理由にした戦闘再開は断じて許されない。
ハマスは戦後の権力維持にこだわらず、イスラエルも早期の完全撤退を図るべきだ。占領が続いたり戦闘が再開したりすれば、米国を含め国際社会は最大限の圧力をかける必要がある。
トランプ氏が示した和平計画によると、戦後復興や統治は自らがトップを務める「平和評議会」が監督する。パレスチナ国家の樹立は、ガザの再建やパレスチナ自治政府の改革が進んだ後に「道筋が整う可能性がある」との表記にとどめた。
これまでトランプ氏はパレスチナ国家の樹立に否定的な姿勢を見せ、イスラエルによる自治区への入植を容認してきた。しかし、真の和平を確立するには1993年のオスロ合意に立ち戻らねばならない。トランプ氏は仲介役として「2国家解決」をイスラエルに促すべきだ。
今回の合意はトランプ氏がネタニヤフ氏に受け入れを強く迫って実現した。しかし、米国が人道危機拡大に手をこまねいている間、国際社会が批判を強めたことも大きな力となった。
トランプ氏は「力による平和」を一貫して誇示するが、今こそ国際協調の重要性を認識する必要がある。