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 日本維新の会の藤田文武共同代表が、公設秘書が代表を務める会社にビラの印刷などを発注し、2017年から24年までに計約2千万円を支出していた。9割以上の原資が調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)などの公金という。自民党と連立与党を組む維新の代表に浮上した「政治とカネ」を巡る疑惑であり、高市政権としても真相究明に乗り出す必要がある。

 共産党の機関紙「しんぶん赤旗」日曜版が「身内へ税金還流」などと疑惑を報じた。藤田氏は秘書の兼職届を国会に提出しているとした上で、業務発注は「実態のある正当な取引で法的に適正」と反論する。

 だが「身内」の企業との取引は価格の適正さも担保されにくく、公金還流や利益供与との疑念が拭えない。藤田氏は具体的な契約内容を示すなど説明責任を果たすべきだ。

 藤田氏は党役職の辞任を否定する一方、「誤解や疑念を招くとの指摘を真摯(しんし)に受け止めたい」と述べ、今後は取引をやめる考えを示した。

 秘書が代表を務める企業との取引に関する法的な規制はない。ただ、維新が3親等以内の親族への公金支出を禁止する内規を設けているのは疑念を抱かれないためだろう。

 維新の吉村洋文代表(大阪府知事)は今回の問題を受け、内規を改め、議員や秘書が代表に就く企業への公金支出を禁じる考えを明らかにした。一連の支出が不適切だと認識したからにほかならない。

 さらに、吉村氏が代表を務める維新大阪府総支部も、藤田氏の秘書の会社に「ビラ作成費」として約100万円を支出していたことが判明した。党全体のガバナンスが問われかねず、外部の専門家も入れて徹底的に調査してもらいたい。

 維新を巡っては、両院議員総会長を務めた石井章・元参院議員が今年9月、公設秘書の給与を不正受給した罪で在宅起訴されるなど不祥事が相次ぐ。結党以来、「身を切る改革」を掲げ、企業・団体献金の禁止や使途公開不要の政策活動費廃止のほか、衆院議員の定数削減も訴えてきた。何より自らの身を律する改革こそ急ぐべきではないか。

 看過できないのが、疑惑を報じた赤旗記者の名刺の画像を藤田氏がX(旧ツイッター)に投稿したことだ。携帯電話の番号やメールアドレスの一部はぼかしているものの、記者の名前や職場の電話番号などはそのまま載せている。個人への攻撃をあおるような威圧的な行為は自らに不利な報道への報復に等しい。

 藤田氏は直ちに画像を削除するとともに、政権与党の代表である立場を自覚し、自らに向けられた疑惑に対し説明を尽くすのが筋である。