高市早苗首相の就任後初となる党首討論がきのう、国会で開かれた。6月以来の首相と野党党首による直接対決の場である。台湾有事を巡る首相答弁に反発を強める中国に対する外交方針や物価高対応を含む経済対策などが主要テーマとなったが、議論はかみ合わず、国民の不安や疑問に答えるには程遠かった。
高市政権が発足して1カ月が過ぎた。初の女性首相への期待感もあり、内閣支持率は7割近い高水準で滑り出した。一方で、「強さ」を押し出す首相の政治姿勢は「存立危機事態」の個別事例に踏み込んだ発言で対中関係の悪化を招くなど、危うさも露呈している。
立憲民主党の野田佳彦代表は日中関係を悪化させた発言について、「国益を損なう独断専行が原因だ」と追及した。首相は問題の答弁は撤回しなかったが、「日本は台湾の法的地位を確認する立場にない」と述べ、政府として対中姿勢を変えていないと強調した。「対話を通じて良い関係をつくり、国益を最大化していくことが私の責任」とも訴えた。
野田氏は、21兆円規模となる政府の経済対策について、歳出膨張による財政悪化の懸念が市場で強まっている現状を踏まえ「放漫財政への警鐘だ」と批判した。首相は「野党の物価高対策も取り込んでおり、指摘は当たらない」とかわした。
首相は政権運営への協力を仰ぐため、国民民主党には秋波を送った。玉木雄一郎代表が所得税が生じる「年収の壁」の178万円への引き上げを要求したのに対し、首相は「手取りを増やすことは賛成。一緒に実現しましょう」と呼応した。
一方、今国会前に連立を離脱した公明党の斉藤鉄夫代表と、参院選で躍進した参政党の神谷宗幣代表が初めて党首討論に臨んだ。斉藤氏は、首相が見直しを検討する非核三原則を「堅持すべきだ」と迫ったが、首相は「安全保障関連3文書の改定に当たり、見直しを指示した事実はない」と堅持を明言しなかった。
少数与党の国会では予算案や法案は野党の賛同なしに成立せず、対話を重視した丁寧な合意形成が求められる。党首討論はその糸口をつかむとともに、論戦を通じ政策の選択肢を示す場でもある。今回、与野党が認識を共有していたかは疑わしい。
何より1回45分間の枠では短すぎる。最長の野田氏で28分、最短の神谷氏は3分しかない。十分な質疑時間を確保し、頻度も増やすべきだ。前国会では多くの国民に見てもらおうと、午後6時に開始時間を遅らせた。今後も継続する必要がある。
国会に緊張感を取り戻すために、テーマを絞るなど与野党で在り方を根本的に見直すことが急務だ。
























