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 ウナギが店頭から姿を消す事態は避けられた。

 野生動植物の国際取引を規制するワシントン条約の締約国は委員会を開き、ニホンウナギを含むウナギ全種を規制するよう求める欧州連合(EU)とパナマの提案を否決した。日本で出回るウナギの7割は輸入が占めており、規制されれば値上がりにとどまらず、品不足を招く可能性があった。

 日本政府は「ニホンウナギは十分な資源量が確保され絶滅の恐れはない」と強く反対した。だがニホンウナギは乱獲や自然破壊の影響で「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」として環境省のレッドリストに指定されており、決して安心できない。これからもウナギを食べられるように生産者も消費者も知恵を出す必要がある。

 EUは、すでに規制対象となっているヨーロッパウナギがニホンウナギとして違法取引されていると主張した。ワシントン条約事務局も支持して採択を勧告し、当初は日本が不利とされた。

 日本は各国への説得に力を入れ、採決は賛成35、反対100と一方的な結果となった。ただ反対はアジアやアフリカが中心で、ウナギに関心が高い国々ばかりではない。政府開発援助(ODA)などを踏まえ、日本との関係を維持したいとの思惑も影響したのだろう。

 委員会の採決結果を受け、EUの提案は5日の全体会合で正式に不採択になる見込みだ。しかし2~3年後に開かれる次回会合を見据えれば、日本は世界最大の消費国としてウナギの資源管理をさらに強化しなければならない。

 具体策の一つが、今月から稚魚のシラスウナギに適用された水産流通適正化法だ。漁業者や取り扱い流通業者に行政への届け出を義務づけ、取引記録を保存することで違法な漁の抑制を狙う。

 重要なのは消費者が、適切な手段で漁獲したウナギを選べるようにすることだ。価格ばかりに目を奪われては乱獲を食い止めるのは難しい。

 大手スーパーの中には、環境保護や資源の持続可能性に配慮した漁法の水産物に「海のエコラベル」を貼って販売する例もある。同じようにウナギも関係業者が連携し、消費者が絶滅の危険性や保護の重要性を意識しながら食べられる手法を工夫してほしい。

 ニホンウナギの人工ふ化も研究が進む。今年7月には国立研究機関が、稚魚の飼育コストを現在の20分の1に下げる水槽を開発し特許を取得した。タイやサケのように、完全養殖されたウナギが市場に安く出回る日も遠くなさそうだ。