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 米国とイスラエルによるイランへの攻撃が始まって2週間が過ぎた。イランは中東全域やトルコに反撃を拡大し、世界の原油やLNG(液化天然ガス)輸送の2割が通行するホルムズ海峡を封鎖している。

 1バレル=60ドル台後半だった原油価格は急騰し、15日のニューヨーク先物相場では一時100ドルを突破した。イランの新しい指導者モジタバ・ハメネイ師はホルムズ海峡を「戦争での圧力手段として使う」と表明し、封鎖の長期化が懸念される。日本をはじめ世界各国のエネルギー安全保障が人質に取られている状態だ。

 国際エネルギー機関(IEA)に加盟する日米欧など32カ国は、計4億バレルに上る石油備蓄の放出を決めた。過去最大の規模になる。日本はIEAの割り当てに上積みし、きのう民間備蓄分を先行して放出した。しかし、原油市場の反応は鈍く、今回の対策が焼け石に水であることを示している。

 世界経済には暗雲が垂れ込める。原油高騰による物価押し上げに加え、生産活動の停滞で景気が減速する可能性も否めない。各国が連携して当事国を和平交渉の席に着かせるのが最も効果的な対策である。

 原油高に加え、日本経済にとっては円安の進行もダメージが大きい。2024年以来となる1ドル=160円突破も現実味を帯びる。

 従来は国際情勢が大きく動くと、円は「安全資産」とみなされて買われ、円高を招いた。ところが今回は原油高騰で日本の貿易収支や景気の悪化が見込まれ、円が売られている。円安は輸出にプラスとされるが、原油高も重なり輸入物価の上昇に拍車がかかる可能性が大きい。政府は為替市場を注視し、投機とみられる急激な変動があれば直ちに円買い介入を行う必要がある。

 国内では春闘が本格化する時期を迎える。今年こそ物価高を上回る賃上げを実現させ、実質賃金をプラスにすると政府も経済界も力説してきた。だが、戦火拡大で先行きへの悲観視が強まれば、賃上げに二の足を踏む動きが広がりかねない。

 26年度予算案の国会審議がヤマ場を迎えるが、成立を待たずして早くも与野党から経済対策の策定を求める声が上がりそうだ。

 しかし、いくら予算を付けても企業や個人が中東の混迷に身構える中では大きな効果が見込めない。財源を安易に国債に頼れば財政はさらに悪化し、円安を加速させるだろう。物価高には逆効果である。

 首相は今週、トランプ米大統領との首脳会談に臨む。世界経済の正常化へ、イランとの争いを終わらせるよう強く働きかける責務を負っていることを自覚してもらいたい。