神戸新聞NEXT

 政府は、2026年度当初予算案の月内成立を事実上見送り、「つなぎ」となる暫定予算案の編成に着手した。高市早苗首相は年度内成立を譲らない強気の姿勢を続けてきたが、参院で多数を占める野党が十分な審議時間を求めて反発を強め、方針転換を余儀なくされた。

 暫定予算には、国民生活に影響が出ないよう最低限の経費が盛り込まれる。社会保障費、地方交付税交付金などに加え、新規施策で4月から始まる高校授業料の無償化が計上される見通しだ。26年度当初予算案は既に衆院で可決されており、憲法の規定で自然成立する4月11日までの11日分を想定する。暫定予算が成立すれば、第2次安倍晋三政権の15年以来、11年ぶりとなる。

 当初予算案の審議入りは例年より約1カ月遅れた。自民党と日本維新の会の与党が議席の4分の3を占める衆院では野党の合意を得ず、審議日程を自民の予算委員長が次々と職権で決め強引に通過させた。年度内成立に固執する首相に与党が唯々諾々と従い、質疑時間は59時間と01年以降で最短にとどまった。首相の答弁回数も減らすなど、予算審議を空洞化させた責任は重い。

 首相は「国民生活に支障を生じさせない」と繰り返すが、審議入りの遅れは通常国会冒頭に衆院を解散したからだ。自らの責任を棚に上げ、衆院選での自民大勝による数の力で年度内成立をもくろむ姿勢は国会軽視も甚だしい。強引な政権運営を反省するべきだ。

 参院で与党は過半数を持っておらず、衆院と同じ手法は通用しない。野党は例年並みの「60時間以上」の審議時間を求めており、予算案の審議を強行すれば他の法案審議にも影響を与えかねない。

 年度内成立が必要な税制関連法案など「日切れ法案」を審議する総務、文教科学などの委員会の委員長ポストは野党が握る。松本洋平文部科学相の不倫問題で、高校授業料無償化の関連法案を扱う文教科学委員会の審議が停滞する。暫定予算案の編成は政府側が言うような「不測の事態への備え」などではなく、そもそも不可避だった。

 すでに野党は、暫定予算案が提出されれば賛成する意向を示している。早期に成立させるとともに、衆院で不十分だった当初予算案の審議に十分時間をかける必要がある。イラン情勢など国内外の重要課題についても丁寧な議論が求められる。参院は「再考の府」にふさわしい審議の在り方を示してもらいたい。

 今後、「国家情報会議」創設法案など国論を二分する審議が待ち構える。首相は数の力におごらず、謙虚に国会に臨まねばならない。