トランプ米大統領は日本時間のきのう、国民向けに演説した。
イスラエルとともに始めたイラン攻撃は、国連憲章が定める自衛権を逸脱しているのは明らかだ。中東で人的被害を広げ、世界経済を混乱させている。しかし演説で解決の道筋は示されず、自画自賛と国際社会に対する無責任さが際立った。失望と強い憤りを禁じ得ない。
トランプ氏はイランの海軍と空軍を壊滅させたと強調し、「目標はほぼ達成しつつある」「作戦を速やかに完了させる」と述べた。一方でイランが今後2~3週間で戦闘終結へ向けた協議で合意しなければ「猛攻撃をかける」と圧力を強めた。
演説に先立ち、イランのペゼシュキアン大統領は「対立は代償が大きく無益だ」とする米国民向けの書簡を公表した。ただ、イランの軍事当局は演説後に「代償を払わねばならない」と徹底抗戦を宣言し、イスラエルに弾道ミサイルを発射した。
軍事的な応酬がエスカレートすれば、中東はテロや戦争の「火種」をさらに抱え込むことになりかねない。長期にわたり情勢が緊迫化する恐れがあり、世界経済に与える打撃は計り知れない。米国とイスラエル、イランは一刻も早く停戦を実現させるべきだ。国際社会は働きかけを強める必要がある。
イランが事実上封鎖するホルムズ海峡について、トランプ氏はまさに言いたい放題だった。「米国は中東産原油を必要としていない」として、輸送の安全確保には石油を必要とする各国が対応すべきだと強弁した。あろうことか「米国から原油を買えばいい」とまで言い放った。
そもそも米国とイスラエルが招いた事態である。世界の原油や液化天然ガス(LNG)の2割、日本が輸入する原油の9割はホルムズ海峡を通過する。混乱を放置したまま対イラン作戦から手を引くのであれば、無責任極まりない。米国内でもガソリン価格が高騰し、影響は市民生活にも及ぶ。封鎖の解除とエネルギー輸送の安全確保に米国は責任を果たさねばならない。
トランプ氏は北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を検討する意向を表明していた。演説では言及しなかったものの、NATO加盟国がイランとの戦闘に積極的に協力しなかったと不満を募らせている。今後も離脱をちらつかせてNATOに揺さぶりをかける可能性がある。
「法の支配」を無視し、国際的に孤立しつつある米国との向き合い方が問われているのは日本も同様だ。迷走を深めるトランプ氏に巻き込まれず、多国間協調の下、国際秩序と平和の構築に向け、主導的な役割を果たすべきである。
























