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 国土交通省が発表した公示地価(1月1日時点)は、住宅や商業、工業など全用途の全国平均が2・8%と、バブル期の1991年以来の値上がり幅となった。上昇は5年連続である。インバウンド(訪日客)の増加や大型再開発などを反映し、都心部の物件の引き合いが高まって価格を押し上げているのが全国的な傾向だ。

 首都圏では新築マンション価格が平均9000万円、東京23区では中古も1億円と、平均的な所得層では手が届かない水準に達している。連動して賃貸も値上がりし、住宅費の負担が重くのしかかる。

 オフィス需要が根強く、上昇は持続するとの見方がある。一方で居住実態のない物件が高値で取引されるなど、昭和末期から平成にかけてのバブル経済と同様に投機の影もちらつく。政府は実体経済や国民生活に及ぼす影響を注視する必要がある。

 兵庫県内の公示地価は平均で商業地が4・0%、住宅地2・2%値上がりし、商業地はバブル経済が崩壊した92年以降最大の上昇となった。商業地で県内最高となった神戸市中央区三宮通1では、9・6%の急騰となった。

 地域別では但馬、丹波などで住宅地が下落したが、ひとくくりにはできない。但馬は豊岡市や朝来市で、JRの駅や医療センターに近い場所が値上がりした。丹波篠山市でも駅に近い地域が1・4%上昇した。

 生活環境が整えば、人口減が続く地域でも住み替えや移住の需要があることを示す。東京や大阪など都心部への転出をいかに食い止めるかが多くの自治体の課題だが、ハード、ソフト両面でより住みやすくすることを考えてほしい。

 バブル期の地価高騰の背景には金融機関の過剰融資があった。政府、日銀は金利引き上げや融資規制で地価を押さえ込んだが、景気全体も冷え込ませ、その後の長期不況を招いた。

 首都圏や大都市の不動産需要を政策で無理に抑え込むと、経済にひずみを及ぼしかねない。日本各地の生活やビジネス環境を整え、住みたくなり、事業を展開したくなる地域を増やすことで、需要を分散させることが重要だ。