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 ミャンマーの上下両院合同の連邦議会(定数計664)は3日、2021年のクーデターを主導した軍事政権トップ、ミンアウンフライン前国軍総司令官を大統領に選出した。軍政が事実上継続する事態を憂慮する。

 昨年12月から今年1月にかけて実施された上下両院の総選挙では、国軍系の連邦団結発展党(USDP)が339議席を獲得したとされる。憲法の規定で軍人に割り当てられる166議席を合わせて、議席の8割超を占める。数字の上ではUSDPの圧勝である。

 しかし、この結果は民主派指導者アウンサンスーチー氏が率いてきた国民民主連盟(NLD)など民主派の主要政党を国軍が排除し、批判者を逮捕するなど国民の投票行動を監視したことによる。内外から厳しく批判される「見せかけの選挙」に正当性は見いだせない。

 21年のクーデターは、前年の総選挙でNLDが圧勝したことに端を発する。国軍は「大規模な不正があった」としてスーチー氏を拘束し、選挙を無効にした。今回の総選挙も国軍の抑圧でゆがめられた。

 軍政は選挙結果を基に「民政移管」を主張し支配の正当化を図るが、実態とはかけ離れている。国際社会は監視を強め、スーチー氏らを解放した上で自由で公正な選挙を実施するよう粘り強く求めるべきである。

 懸念されるのは、軍政に武器を供与する中国やロシアが国際社会への復帰を後押しすることだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国にも選挙結果を容認する動きがある。しかし強権支配をなし崩し的に既成事実化することは許されない。

 ミャンマーではクーデター後、軍政に対して民主派や少数民族の勢力が武装蜂起し、内戦が泥沼化している。人権団体「政治犯支援協会」によると、政権の弾圧による死者は7700人を超えた。昨年3月に発生した大地震からの復興に影を落としているとの指摘もある。

 関係国の仲介による早期の停戦が急がれる。ミャンマー市場への影響力拡大を狙う国が、国軍に肩入れして反政府勢力の弾圧に加担する事態はあってはならない。

 日本の役割も問われる。ミャンマーに対し歴史的な友好関係と屈指の支援実績があり、21年のクーデター後は軍政と民主派の双方と接点を保ってきたとされる。だが、力ずくで権力を奪った軍政は信任しない断固たる態度を示す必要がある。

 ミャンマー国民は対日感情が良好で、働き先として日本を目指す人も多い。高市政権は民衆への人道支援に主眼を置き、長期的な視点で民主化を支えてもらいたい。