神戸新聞NEXT

 各地の観光施設で、住民以外の入場料などを高くする「二重価格」を導入する動きが相次いでいる。

 姫路市は3月1日から、世界文化遺産・姫路城の入城料を市民の一般料金(18歳以上)を千円に据え置く一方、市民以外は2500円に引き上げた。市は増収分を城の維持管理費などに充てる。市によると、値上げ後の1カ月間の入城者数が前年同期比で2割弱減少したものの、料金収入は倍増する見込みという。

 鹿児島市でも昨年10月、水族館など旅行者らの利用が多い14の観光・文化施設で市民以外の料金を高くする制度を導入した。訪日客らの増加に悩む京都市は2月、市民と市民以外でバスの運賃を分ける方針を示し、議論を呼んでいる。

 維持管理費の財源に市民税を含む市の予算が投じられるなど、市民か否かで線を引くことには一定の合理性がある。ただ負担増となる市外からの来訪者の不満が募れば客離れが想定以上に進む恐れも指摘される。料金設定の根拠や増収分の使途を丁寧に説明する姿勢が不可欠だ。

 円安の影響もあり、2025年の訪日客数は初めて4千万人を突破した。一方で、観光客の集中による交通機関の混雑や一部の客のマナー違反などオーバーツーリズム(観光公害)が問題になっている。二重価格は観光公害対策や施設整備などの財源としても期待されるが、効果と影響を慎重に議論する必要がある。

 海外ではインドのタージ・マハルやエジプトのピラミッドなど、外国人料金を自国民よりも大幅に高く設定しているケースも珍しくない。

 国内では昨年7月に開業したテーマパーク「ジャングリア沖縄」が外国人料金を設けたが、訪日客のネット上の評価は分かれる。姫路城の入城料を巡っても、姫路市の清元秀泰市長は当初、訪日客の料金を4倍にする考えを示したが、市議会などから慎重意見が相次ぎ、方針転換した経緯がある。多言語での案内表示など経費は増えているものの、外国人差別と受け取られないよう、合理的な制度設計が求められる。

 二重価格は政府も国立の博物館・美術館に導入を促している。各館への公費支出を減らし、収入増を図る一方、来館者の減少が懸念される。二重価格は今後も広がる可能性があるが、料金設定などに悩むケースも予想される。政府は公的観光施設向けの指針を策定する方針だ。

 多くの利用者の理解と協力を得ながら、質の高いサービスを提供できるかが鍵となる。値上げに頼らず、早朝・夜間の特別公開や舞台裏ツアーの別料金での設定、オリジナルグッズの販売など独自収入を増やす方策も考えねばならない。