政府は2026年版の中小企業白書と小規模企業白書を閣議決定した。日本経済が成長を続けるには中小企業の持続的な賃上げが極めて重要と指摘し、そのために「稼ぐ力」を高めるよう促しているのが特徴だ。
中小企業で働く人は国内の雇用の約7割を占める。中小の賃上げが行き詰まれば、高市政権が目指す「強い経済」の構築や物価上昇に負けない賃金上昇の実現は難しくなる。
白書によれば、すでにその足元は揺らいでいる。稼ぎのうち人件費に回す比率を示す労働分配率は中小で8割近く、4割台の大企業に比べ賃上げの余力は乏しい。求人難に加え、政府や経済界、労働団体がデフレ脱却を進める動きを受け、中小の賃上げ率はここ10年近く大手を上回り続けた。伸びしろが少ないのは当然ともいえる。
白書は、稼ぐ力を高め「強い中小企業」となることで、新たな賃上げ原資の確保を見据える。また、中小企業の人手不足がさらに深刻になる中で、賃上げが人材の定着につながる可能性も指摘する。
特に重視するのが従業員1人当たりや労働時間1時間当たりの付加価値を示す労働生産性の向上だ。生産性が上昇した業種は賃金も高くなるとのデータが示されている。加えて、生産性が高い企業ほど設備投資に意欲的とも指摘した。デジタル化促進など大胆な経営判断が要る。
ただ成長投資の実行には、経営面で一定の余裕があることが条件となる。東京商工リサーチの調査では、昨年は倒産が2年連続で1万件を超え、その多くを中小企業が占めていた。今年も円安による原材料価格高騰や日銀の利上げに伴う金利上昇の影響などのリスクのほか、新型コロナウイルス禍の債務の返済に苦しむケースもあるとみる。
今後、中東情勢の悪化で原油や原油由来の原材料がさらに入手しにくくなれば、倒産も増える可能性がある。苦境にある中小企業に目を配り、成長への足がかりを探る経営者を支援する施策の議論が必要ではないか。
全国の中小企業は約336万社ある。日本経済の土台を支えるとともに、地域創生にも大きく関わることを政府には認識してもらいたい。























