確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直しに向け、政府は刑事訴訟法改正案を閣議決定し、衆院に提出した。審理長期化の要因とされる再審開始決定に対する検察の不服申し立て(抗告)権について本則から削除し「原則禁止」とする一方、「十分な根拠」がある場合は認めるとする規定を別に設けた。
法務省が法制審議会の答申に基づいて3月に示した当初案は、検察の抗告を制限していなかった。自民党との協議で「冤罪(えんざい)の早期救済を阻む」との批判が噴出し、3度の修正の末、本則で原則禁止することで折り合った。日本維新の会も了承した。
改正案を巡って与党議員が救済遅れに強い懸念を示し、抗告権の温存方針を覆させたことは一定評価できる。しかし全面禁止とせず、申し立ての可否の判断を検察の裁量で行うとした点には懸念が残る。検察による抗告の乱用を防ぐため、国会では要件などについて線引きの厳格化など議論を尽くさねばならない。
冤罪救済に向けては依然課題が残っている。証拠開示の在り方だ。
改正案が開示制度を新設し、裁判所が検察に提出を命じるようにした点は前進といえる。問題なのは、開示の対象を「請求理由に関連する証拠」に限定した点だ。これでは裁判所の裁量次第で被告に有利な証拠が出てこなくなる恐れがある。
さらに開示された証拠の目的外使用を罰則付きで禁じた点も疑問が拭えない。報道などを通じ支援者らが広く内容を共有、吟味する道が閉ざされかねず、日本新聞協会などが反対の見解を示したのは当然だ。
静岡県一家4人殺害や福井中3殺害などの再審無罪事件では、検察側が不利な証拠を意図的に隠したり、証拠を捏造(ねつぞう)したりしたと認定された。こうした状況は被告の権利を侵害すると言わざるを得ない。国会審議を通じ、全ての証拠が開示される制度設計に法案を修正するべきだ。
中道改革連合など野党3党も検察抗告の全面禁止を盛り込んだ改正案を衆院に提出した。野党案も審査し、優れた点は取り入れてほしい。
冤罪を巡っては別の論点もある。「人質司法」と呼ばれる現状だ。被告側が否認を続ければ、捜査側は「証拠隠滅の恐れがある」として保釈請求に反対し続け、裁判所も安易に追認する構図が指摘されている。
機械製造会社「大川原化工機」(横浜市)の冤罪事件では、元顧問が再三にわたり保釈を求めたのに却下され続け、胃がんの悪化で被告の立場のまま死亡した。このような悲劇を繰り返してはならない。法務省は裁判所に人質司法の実態把握を促し、あらゆる観点から再発防止と早期救済を実現する必要がある。























