NHKの職員が番組出演者から性被害を受けて体調を崩し、その後、別の職場での復職が長く聞き入れられなかった問題が明らかになった。外部の専門家による調査検討委員会の報告を受け、NHKが発表した。労働組合を通じ、職員が希望が通らない理由の確認を求めた結果、ようやく異動が実現したという。
職員は性被害の影響による心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断された。元の職場では精神状態が悪化すると訴えた被害者に対し、あまりにも配慮がなさすぎる。目に余る人権意識の欠如であり、NHKのガバナンス(組織統治)の在り方に疑念を持たざるを得ない。
NHKによると、職員は番組出演者、制作者らとの懇親会の後、出演者から被害を受けた。そのため欠勤と休職を余儀なくされ、1年数カ月後、復職にあたって配慮を求めた。しかし人事局などは、現所属への復職が原則として認めなかった。
驚くのは、被害から異動の実現までに約3年も要した点だ。主治医と産業医も希望に沿う復帰を求めたにもかかわらず、異動を慎重に検討した形跡はなく、リスクマネジメント室との情報共有もなかったという。「前例踏襲の対応に終始した」という調査検討委の厳しい指摘をNHKは重く受け止める必要がある。
NHKは人事担当者ら5人を懲戒処分にせず、注意するにとどめた。加害側の出演者は「飲酒していたため記憶がない。もしそうした事実があったのであれば申し訳ない」と話したという。氏名は明らかにしていない。加害者を巡る被害者の意向を尊重し、プライバシー保護を図るのは当然としても、加害者を含む関係者への処分・対応が妥当だったかどうかの検証が今後求められる。
再発防止策として、NHKはハラスメント防止規定の改正や人権方針の策定、研修などを掲げ「人権尊重の組織風土づくり」への決意を述べた。組織全体の意識を変えるには、地道で長期的な取り組みが欠かせない。公共放送に携わる組織として、より抜本的な改革を進めるべきだ。
大手出版社の小学館でも、漫画家の性加害を把握しながら原作者に起用した問題が発覚した。ペンネームを変えて、別の連載を始めていた。第三者委員会の調査報告書は「被害女性への人権侵害を助長または加担する対応と評価されてもやむを得ない」とした。フジテレビでも昨年、タレントによるアナウンサーへの性加害が第三者委に認定された。
いずれの問題でも性暴力に対する組織の認識不足が露呈している。メディアには当然ながら高い人権意識が要求される。業界全体に厳しい視線が向けられていると自覚したい。
























